『デジモン』はなぜファンの心を掴み続ける? 評論家が『デジモンアドベンチャー tri. 第5章「共生」』を語り尽くす

 さやわか「最後は急激に熱血さを取り戻して、技名を叫びまくって欲しい」

ーーそんな関係性が、一度リセットされる展開(リブート)があるのも、『tri.』の見どころだと思います。

さやわか:あれはキツイですよね。もちろん、シリーズによっては死んだデジモンは生き返らないとか、負けた相手に吸収されちゃうみたいなことはありましたし、戦いに負けてデジタマに還ることもありましたけど、精神的な繋がりを絶たれるというのはショッキングでした。だって、デジモンと僕ら視聴者もまた関係を築いてきたわけですから、あの瞬間は自分たちもデジモンに忘れられたんだとひどくショックを受けました。

ーーしかも、大人になった選ばれし子どもたち側は、彼らとの日々を忘れられない。

さわやか:そうですよね。子どもたちが忘れてないのに、デジモン側だけがリセットされているのも切ないです。よくゲームは「リセットすればやりなおせる」なんて言いますが、実はそこまでにかけていた労力や時間、そのキャラクターに対する想い入れとかが一度なくなってしまうわけなので。

まにょ:その展開が第3章で急に来たのも驚きでした。

さやわか:『デジモン』は色々なシリーズがありますけど、太一たちの『無印』(『デジモンアドベンチャー』テレビアニメシリーズ第1作)からの物語を『02』のラストに向けて落としていくのであれば、この話は必要なエピソードだったと思いますけどね。ちゃんと挫折があるというか。熱血のままでは、多分ああいう大人にはなっていけないはずなんで。

ーー00年代にあのまま大人になる人はいない、みたいなことを突きつけられた感じもします(笑)。

まにょ:まだ第5章が始まったばかりですが、さやわかさんは第6章、どうなると思いますか?

さやわか:どうなるかはわからないですが、「デジモンたちの記憶が戻りました。はい、よかったね」みたいな展開にならない方が僕は嬉しいですね。たとえ戻るとしても、それにプラスして生まれ変わったパートナーとの関係を築いたことの価値を重視してくれた方がリアリティを追求する『デジモン』らしいし、お互いの出会いをある種「偶然」として描く作品にピッタリだと思うんです。個人的には第6章しかないのに、あと1章で全部伏線が回収できるのかが気になります。

ーー過去のシリーズの伏線を回収しつつ、新たな伏線もたくさん引いているので、それをどう回収するのかは気になります。

さやわか:伏線を張ったり回収したりしながら、かつ『デジモン』のお約束みたいなシーンもちゃんと盛り込まれていて嬉しいですよね。烏龍茶を飲むとか、隙があったらそういう小ネタを入れてくれるところが面白いので、第6章でもそういうネタは期待したいです。

まにょ:私はある程度の希望を持たせて終わって欲しいという思いがあります。ただこの流れで行くと、観客に答えを投げて終わるんじゃないかという説もあります……。

ーー00年代のアニメでよくあった、「あとはみなさん個々の想像にお任せします」パターンですね。どちらにせよ『02』のエンディングが『デジモン』の終わりであり、遠くにある未来のはずなので、最終的にはそこに着地するような想像で補完してください、となりそうな気がします。

さやわか:確かにそうですね。あと、西島先生と姫川さんの大人2人が何をやっていたか明かされないままでも面白そうです。でも、大人のことはまだわからない子どもたちだからこそ、とにかく苦難を乗り越えて、ハッピーエンドになるというのが『デジモン』らしいと思うので、やっぱり最後の20分か30分くらいは急激に熱血さを取り戻して、技名を叫びまくって欲しいかも(笑)。

(取材・構成=中村拓海)

■公開情報
『デジモンアドベンチャー tri. 第5章「共生」』
3週間限定劇場上映中
劇場限定版Blu-ray先行発売/先行有料配信 同時スタート
(※一般販売版 Blu-ray&DVD ハピネットより11月2日(木)発売)
Blu-ray:8,640円、DVD:7,560円(各税込)
上映館:札幌シネマフロンティア、MOVIX 仙台、新宿バルト9、渋谷TOEI、T・ジョイ PRINCE 品川 横浜ブルク13、MOVIX さいたま、T・ジョイ蘇我、シネシティザート、TOHO シネマズ 浜松 109シネマズ名古屋、梅田ブルク7、T・ジョイ京都、広島バルト11、T・ジョイ博多、鹿児島ミッテ10
出演:花江夏樹、坂本千夏、三森すずこ、細谷佳正、田村睦心、榎木淳弥、池田純矢、M・A・O、浪川大輔、甲斐田裕子、櫻井孝宏、竹内順子、荒川美穂、徳光由禾、森下由樹子 ほか
監督:元永慶太郎
シリーズ構成:柿原優子
キャラクターデザイン:宇木敦哉
(c)本郷あきよし・東映アニメーション
公式サイト:http://digimon-adventure.net/

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