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25年の時を経て『ツイン・ピークス』はどう生まれ変わった? SF的アプローチの狙いを読む

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 日本でも社会現象を巻き起こした海外ドラマ『ツイン・ピークス』の続編作品『ツイン・ピークス The Return』が、7月22日よりWOWOWにて放送されている。前作から25年間の時を経て復活した本作は、待ち侘びたファンの期待をはるかに超える秀逸かつ複雑なストーリーと、スタイリッシュな映像美で、早くも高い評価を獲得しつつある。はるか昔に生産終了した、子どもの頃にお気に入りだったチューインガムが再び味わえるかのような快感に打ち震えているのは、筆者だけではないだろう。

 第8話まで観て、まず顕著な変化を感じたのは、事件へのアプローチの方法だ。

 前作では、シーズン1から2にかけて一貫して、アメリカ北西部の架空の街ツインピークスで起きた「ローラ・パーマー殺人事件」の真相を追い求めるFBIのクーパー捜査官の調査記録だった。クーパー捜査官は、スピリチュアルな世界の存在を信じており、夢分析を軸に事件の真相へ迫ろうとしていた。

 90年代は『羊たちの沈黙』などによりトラウマやアダルトチルドレンといった心理学的用語が一般にも知られるようになった時代で、『ツイン・ピークス』のそうしたアプローチは、まさに時流に則ったものだった。リンチの難解な世界観と相まって、その神秘性は熱狂的なファンを生む魅力の一要素となっていた。 

 そして、シーズン2のラストでは、ローラ・パーマーを殺した犯人は判明するものの、クーパー捜査官は“赤い部屋(ブラックロッジ)”という名の“生死が混同する悪の支配”に飲み込まれてしまい、幕を閉じた。そして、最終回でローラ・パーマーはクーパー捜査官に、「25年後に会いましょう」という予言めいた言葉を残していた。

 その言葉通りに復活した『ツイン・ピークス The Return』だが、その映像が伝えるイメージは、前作と大きく異なっている部分もある。たとえば、精悍な顔立ちの若者が、ニューヨークの古いビルの一室で、ガラス張りのケースの中にある謎の装置と対峙しているシーン。前作から引き続き登場しているキャラクターの中にあって、旬な雰囲気を持つこの若者のビジュアルと、現代的なテクノロジーを感じさせる装置の組み合わせは、本作が25年の時の中でどのような変化を遂げたのかを象徴している。脚本がほとんど出来ていないまま撮り始めたという、前作の緩やかな田舎町のオープニングとは対照的だ。

 前作では、“赤い部屋”や“キラーボブ”といった存在の謎が全て、スピリチュアルな世界によるものだという結論に頼りきっている部分があり、鑑賞者もまたその世界観に則ってストーリーを理解していた。今までのリンチ作品の鑑賞法はほとんど「リンチ作品に現実的な解釈は不要」という暗黙の了解のもとにあったのだ。しかし、この25年の時を経て、夢分析やスピリチュアルな世界の中により確かな根拠を求めたのは、ファンだけでなく、リンチもそうだったのだろう。「大きな魚を捕まえたいなら、深く潜らなければならない」というメッセージを、リンチは自身の著書『大きな魚をつかまえよう』に著している。前作『ツインピークス』で、彼のインナースペースが作り上げた複雑で難解な世界を補足するために、『ツイン・ピークス The Return』では、もう一つの“新しい切り口”が必要だったのではないか。

 そこで出てきたのが、SF的なテクノロジーである。第2話で、クーパーが赤い部屋からこのガラス張りの謎の物体の中に移動してきたことや、続く第3話で、そこからコンセントを通じて現実世界に戻り、ダギー・ジョーンズというそっくりさんと入れ替わるというSF的な展開こそが、今回の『ツイン・ピークス』の神秘をさらに大きくて深い世界の中に泳がせているのである。ガラス張りの装置や第8話で1話分丸々使って描かれたモノクロの世界は今後、クーパーの夢分析という手法に、新たな視座を与えることは間違いない。

 特定の時間内や特定の空間の軌道を無視した“ノットイグジスト”の存在を、本作ではきっとSF的アプローチから解き明かすはずだ。そして、そこにはきっと、デヴィッド・リンチという作家の新境地も見ることができるだろう。

(文=鹿野ムチャ)

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