『コード・ブルー』ヒットに導いた仕掛け人、増本淳プロデューサーの手腕を読む
こういった作り方は週刊連載の漫画のようで、二人の関係は漫画家と編集者に近い。
ドラマの作り方は上記のやりとりで納得できたのだが、一方で引っかかるのが、作品の根底にある作家性のようなものだ。
それは「仕事と子育て」の描かれ方に強く現れている。
例えば『コード・ブルー』の第五話で描かれた、フライトナースの冴島はるか(比嘉愛未)が、流産する場面。
劇中では突然の流産から、立ち直って仕事に戻っていく冴島の姿が描かれたのだが「彼女の行動についていけない」という意見も少なくなかった。
ワーキング・ハイとでも言うような、働いている時の高揚感が増本と安達のドラマでは描かれることが多い。そこで描かれる仕事や子育てに対する意識は妙にストイックで息苦しく、見ていて辛くなることも多い。もちろん苦しさの先にある喜びをちゃんと描いているので娯楽作品として成立しているが、見ている側にとっては負荷が強い。このストイックで容赦がない物語を展開できることこそが安達と増本のドラマが持つ最大の魅力なのだが、優しい物語に慣らされた今の視聴者は付いてこられるのだろうか?
ハードさが増していく『コード・ブルー』を見ながら、そんなことを心配している。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■放送情報
『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』
フジテレビ系にて毎週月曜21:00~放送
出演:山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、成田凌、新木優子、馬場ふみか、寺島進、杉本哲太、りょう、安藤政信、椎名桔平ほか
脚本:安達奈緒子
音楽:佐藤直紀
主題歌:Mr.Children「HANABI」(TOY’S FACTORY)
プロデューサー:増本淳
協力プロデューサー:中野利幸
演出:西浦正記(FCC)、葉山浩樹、田中亮
(c)フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/codeblue/index.html