単なる“リメイク”に終わらない! 独自の“強度”を持った『連続ドラマW コールドケース ~真実の扉~』の魅力

『コールドケース ~真実の扉~』の魅力

豪華キャストと実力派スタッフが集結した日本版『コールドケース』

(c)WOWOW/Warner Bros. International Television Production

 そんな大ヒットドラマを、日本版スタッフは、どのようなアプローチのもと“リメイク”したのだろうか。まずは、出演者から見ていくことにしよう。

 本作の主演に抜擢されたのは、今回が連続ドラマ初主演となった吉田羊。そして、その脇を固める捜査班には、永山絢斗、滝藤賢一、光石研、三浦友和など、現在ドラマや映画の第一線で活躍する実力派の俳優たちを集結。それだけではない。主要キャスト以外にも、吉沢亮、大野いと(#1)、仲里依紗(#2)、ユースケ・サンタマリア(#4&10)、村上虹郎(#5)、門脇麦、仲代達矢(#6)、江波杏子(#9)など、各回のゲスト出演者も、それぞれ名の知れた実力派ぞろい。それだけでも、本作に対する並々ならぬ力の入れ方が窺えると言えるだろう。

(c)WOWOW/Warner Bros. International Television Production

 ちなみに、本作の監督を務めたのは、『SP』シリーズなど、重厚な画面作りで知られる波多野貴文、撮影監督は『シン・ゴジラ』の山田康介が担当。そして脚本は、瀬々敬久を筆頭に、吉田康弘、蓬莱竜太、林宏司らが名を連ねている。さらに、技術面においても、日本で初めてRED Digital Cinema社WEAPONを使用し、全編4K・HDRで制作。回想シーンはスーパー16mmフィルムで撮り下ろし、これをデジタル処理することによって全編4K・HDR制作するなど、恐ろしく手間の掛かった作業をしているのだ。ちなみに、このやり方は、日本初の試みであるという。

日本版『コールドケース』のポイント

(c)WOWOW/Warner Bros. International Television Production

 クレジットの並びを見るだけも、かなり期待できる本作だが、肝心の内容は、どうなっているのだろうか。その内容は、「フィラデルフィア市警」から「神奈川県警」に舞台を移しながらも、台詞やカット割りといった撮り方に至るまで、オリジナル版を相当研究したものとなっている。

 年代と地名がテロップで表示され、色調を変えた画面によって過去の事件が描き出される各回の冒頭部をはじめ、過去と現在がクロスオーバーする登場人物たちの描写など、フォーマット化されたオリジナル版の構成は、もちろん踏襲されている。ただし、そのエピソードの順番は、かなりバラバラに再構築しているようだ。というか、それが本作のポイントのひとつとなっているのだった。全7シーズン(156エピソード)あるオリジナル版のシーズン1/シーズン2、全46エピソードのなかから、10本を厳選して抽出。その骨組みは活かしながらも、時代設定を変更するなど、細やかな翻案がなされているのだ。

(c)WOWOW/Warner Bros. International Television Production

 たとえば、日本版の第1話「閉ざされた声」は、オリジナル版のシーズン2第11話に相当。オリジナルと同じく、過去に起こったカルト教団の事件を扱っているのだが、その時代を1978年から1996年に変更することで、観る者にオウム事件の記憶を呼び起こすよう翻案されている。さらに、第3話「冤罪」では、事件の年代と場所を1995年の神戸――阪神大震災直後の混乱を事件の背景に盛り込んだ形に翻案。さらに、第9話「約束」では、事件を1970年に設定することで、連合赤軍事件をその時代背景として描き出すのだった。

 そう、プロットや構成はそのままに、時代背景を変更することによって、日本版ならではの“深み”と“説得力”を事件にもたらせること。この“換骨奪胎”的なアプローチこそが、本作を単なる“リメイク”作品には終わらない、独自の“強度”を持ったドラマとして成立させているのだ。

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