サーファー・石川拳大が語る、木製サーフボードを作る意義 『OCEANTREE』製作に向けて
木製サーフボードの制作を通じて、環境問題や日本人の精神性に向き合うドキュメンタリー映画『OCEANTREE』が、現在製作されている。クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」にて、1,175,000円を調達して製作される本作の発起人は、神奈川大学在学中のサーファー・石川拳大。地元・湘南で4歳からサーフィンを始めた石川は、全日本学生大会2連覇、全日本大会優勝を経て世界選手権日本代表、オリンピック強化指定選手に選ばれている、いま期待のアスリートだ。そんな彼が、木製サーフボード“アライヤ”の制作を通じて、“当たり前のことにもう一度向き合う”のが、本作のテーマ。一体なぜ、石川は映画を製作しようと考えたのか。そして、取材を通して見えてきた、大きな課題とは?
「サーフボードの奥にあるストーリーを見て欲しい」
ーー『OCEANTREE』製作のきっかけを教えてください。
石川:大学の授業で、石川県に住む海洋学者の寺内元基さんと出会ったのが、一番大きなきっかけですね。寺内さんは自分で木製サーフボードを作っていたんですけれど、その木材は現地で採ったものだというんです。そのサーフボードを使って、彼はサーフィンを楽しんでいる。言ってみれば、“地産地消”みたいなことを、サーフボードでやっているんですね。なぜ彼がそんなことをしているかというと、海の汚染というものは、海だけを見ていても改善されないもので、海につながる川や、山についても考えなくてはいけないからだと仰っていました。木製サーフボードを通して、「その奥にあるストーリーを見て欲しい」という寺内さんの言葉には、ハッとさせられるものがありました。これまで僕は、ずっとサーフィンをしてきたけれど、そういう考えには至らなかったんです。これはぜひ、僕自身も地元の湘南でチャレンジしてみようと思い、今まで捨てられるだけだった間伐材を再利用して、サーフボードを作ることにしました。“OCEANTREE”というプロジェクト名は、海と木を繋げるという意味です。
ーープロジェクトを映画化することにしたのはなぜ?
石川:サーフィンを20年近くやって、その中で体験した全ての出来事を人々と共有したいとの思いは、以前よりありました。それをどのように表現すれば良いかを考えた時に、もともと好きだった映像や写真にたどり着き、大学の卒業制作として大規模な映画を作ろうと考えたんです。ただ、内容的にはサーフィンの映画ではなく、身の回りにある当たり前のものーーたとえば、いま座っている椅子とか机とか、そういうものへの感謝の気持ちを再確認するというものになっています。サーフボードの制作から、実際に海へと出るまでを描くことで、この考え方を表現しているんです。
ーー当たり前にあると考えているものが、実は大切な資源を使ったものである、と。
石川:僕自身、これまではウェットスーツなどをスポンサーの人から当たり前に貰っていて、それが特別なことだとも思っていませんでした。でも、今回の映画を作り始めて、いまの自分が恵まれていること、豊かな自然や人々の営みに支えられて生きているということに、改めて感謝することができました。そして、この考え方を伝えていくことで、湘南の海を少しでも綺麗にしていければと。いま、湘南の海にはすごくたくさんのゴミがあります。“当たり前にあるものへの感謝”が広まっていけば、少しは変わっていくのではないかと思っています。