『僕たちがやりました』はなぜ不快なのに目が離せない? 軽薄な若者を描く、関西テレビの挑戦

『僕やり』脚本の核となる“軽薄さ”

 制作は『嘘の戦争』や『CRISIS公安機動捜査隊特捜班』(とものフジテレビ系)といったドラマを制作し、ノリのノッているカンテレ(関西テレビ)。漫画版と較べるとおとなしくなっているものの、地上波ではかなり踏み込んで、エロとバイオレンスを描いている。これはカンテレだからこそ実現できたものだろう。

 水川あさみが演じる女教師の存在など、オリジナル要素はあるものの、徳永友一は原作に忠実に脚本化している。

 その結果、かなり不快な作品になっているのだが、この不快さは作り手が見せようと思って見せている「作品の核」だと言うことは忘れてはならない。

 『カルチャーブロスVol.6』(東京ニュース通信社)に掲載された「金城宗幸×荒木光インタビュー」によると原作者の金城は作画の荒木の絵を見て、『ヒミズ』や『シガテラ』を手掛けた古谷実の漫画を目指せると思ったと語っている。現在、古谷実の漫画をドラマ化した『わにとかげぎす』(TBS系)が放送されているので、比較しながら見ているのだが、古谷実の漫画にある、内省的な文学性が、『僕たちがやりました』には存在せず、面白い芸人のやりとりを延々と見せられているような薄っぺらさがある。

 本作が『わにとかげぎす』と較べて劣っていると言っているのではない。むしろ、この徹底した薄っぺらさに、人間の本質のようなものが見え隠れするのが本作の面白さだと思うのだ。多分ここから目を逸らしてしまうと、冷凍庫に入った写真をネットにアップした若者の気持ちを理解することは永遠にできない。

 物語は今後、クライマックスへと向かっていく。トビオたちは今後、反省して罪を償うといったわかりやすい地点に着地するのか、それとも、最後まで軽薄なノリで突き進むのか? しかと見届けたい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『僕たちがやりました』
毎週火曜21:00~21:54
出演:窪田正孝、永野芽郁、新田真剣佑、間宮祥太朗、葉山奨之、今野浩喜、川栄李奈、板尾創路、水川あさみ、三浦翔平、古田新太ほか
原作:『僕たちがやりました』原作:金城宗幸/漫画:荒木光(講談社「ヤングマガジン」刊)
脚本:徳永友一
主題歌:DISH//「僕たちがやりました」
OP曲:Mrs. GREEN APPLE「WanteD! WanteD!」
演出:新城毅彦、瑠東東一郎
プロデュース:米田孝(カンテレ)、平部隆明(ホリプロ)白石裕菜(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/bokuyari/index.html
番組公式Twitter:https://twitter.com/bokuyari_ktv

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