過激なギャグアニメ『アニマルズ』のカタルシス

 人間が見ていないところで、動物たちは何をやっているのか? という疑問をファンタジックに描いた『ペット』という、大人も子どもも楽しめる劇場アニメーションがあったが、ここで紹介するのは、子どもに見せてはいけない、地上波でも放送できないアニメだ。アメリカのHBO(R)の過激なアニメーション作品『アニマルズ』は、ニューヨークで生活する動物たちが暴力やセックス、ドラッグに溺れ、毒舌をぶつけ合うなどの姿を描いている。『ザ・シンプソンズ』や『サウスパーク』、『ファミリー・ガイ』など、アメリカでは過激なギャグが連発されるアニメがいくつもあるが、『アニマルズ』は、ついに配信できる上限まで行ってしまったという感があり、アニメに対して、もっと大人向けの刺激が欲しいと思っている視聴者にはぴったりの作品である。

 本作はまず、毒舌や過激な描写に圧倒されるが、それと同時に、毎エピソードとも最後には思わず心動かされてしまう、謎のカタルシスが用意されているというのも、大きな特徴となっている。ここでは、本作『アニマルズ』のなかにある「毒」について考えながら、魅力の本質にできるだけ近づいていきたい。

ニューヨークに暮らす過激アニマルたちの生活

 本作の絵柄を見れば分かるとおり、『アニマルズ』は、リアルな動物の生態を勉強するものでも、動物のかわいい姿を楽しむ性質のものでもない(慣れてくると次第にかわいいと思えてくるところもある)。ここで擬人化され、ギャグとして扱われる犬猫や馬、ネズミ、ハト、虫、魚などに託されているのは、アメリカの都市生活者における、逃げ場のない不安感であり、その周りを取り巻く、個人を抑圧する社会の姿である。あるネズミは、童貞で繁殖の経験がないという悩みから、メスのネズミに声をかけまくっては傷つき、あるハトは自分のジェンダーに悩み、ある猫たちはペットとしての生活をこじらせ、アブノーマルな趣味を持ち始める。このようなダークなエピソードが、毒のあるユーモアとともに語られるのだ。

 1シーズン(全10話)のなかから、エピソードをひとつ紹介しよう。ネズミのフィルは、好きなメスの前に行くと、緊張して何故か下腹部が勃起状態になるという体質に悩んでいる(この設定からして不穏だ)。フィルは発明家であるネズミの友人に、それを隠すためのパンツを開発してもらう。ネズミ社会には加工した布を身に着けるという文化がなかったため、そのオシャレなパンツは、ネズミ社会で空前のブームとなり、その利益からフィルは豪邸と工場を手に入れる。ネズミの低賃金労働者を大量に雇い、新製品を大量生産してさらなる富を得ようとする、もはや当初の目的とかけ離れ、カネと権力に魅了されてしまったフィルのもとを、友人やメスのネズミが見限って離れていく。ここでは、一匹のネズミの勃起コントロール不全を超え、大量消費社会のなかで、ビジネスを拡大させていくことが至上の命題になってしまった人びとの心や、ブランド志向を皮肉っているのだ。

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