『銀魂』も前評判高し! 元祖2.5次元男子=小栗旬が『CRISIS』で見せる3次元演技

映画『銀魂』

 そして、7月14日公開の映画『銀魂』では、5000万部を突破した漫画原作やアニメ版で親しまれ、多くのファンがそのイメージを共有している“銀さん”(銀時)という役に挑む。その仕上がりを見てみると、小栗の原作そのままではないが役柄のスピリットを再現する演技は、さすが。ひょうひょうとしたキャラクターである銀時のめんどくさそうな口調や鼻を延々とほじる仕草などには、原作をいかに“3次元”の人間として演じるか工夫した跡がうかがえる。そして、実写化した最大のメリットは、銀時がかつては攘夷運動のために剣を取って戦い“白夜叉”と呼ばれた志士だったという強さが、小栗の卓越したアクション能力によって表現された点ではないかと思う。そこには漫画にもアニメでも表現しきれないリアリティと迫力がある。

 『銀魂』(あるいは同じく漫画原作の『帝一の國』)のようにウェルメイドな実写化作品で豪華なコスチュームプレイを見るのは楽しいが、原作ファンであれば展開はどうしても読めてしまう。キャラクター設定も、原作をリスペクトしている制作チームであるほど、変えてはこない。その点、やはり映像オリジナル企画には、予想のつかない面白さがある。

 小栗旬は現在、出演中のドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(関西テレビ・フジテレビ系)で暗い過去を背負う捜査官・稲見を演じている。警察の一員でありながら、与えられた任務を盲信することなく、時にテロリスト側に同意するようなことも言う危うげな人物だが、オリジナル企画だけに、ここでは視聴者があらかじめ共有するイメージがない世界で、自由に役柄を作り上げている。それゆえに彼のポテンシャルがいかんなく発揮され、第1話の回想シーンで一般人を射殺してしまったときの乱れた呼吸、第2話で悪徳政治家の手先である暗殺者を脅すときのささやき方、第5話の潜入捜査で警察官としてのボーダーを超えそうになったときの危険な表情などには、一段と深みがあって引き込まれる。警察組織や格差社会を描くストーリーはやや難解なのだが、そこに強くて弱い“生きた人間”としての稲見を息づかせた演技は見事だ。終盤、その稲見がどんな困難にあい、どんな表情を見せるのか、想像を超える小栗旬の姿を期待して、最後まで見守りたい。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』
関西テレビ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
原案・脚本:金城一紀
出演:小栗旬、西島秀俊、田中哲司、野間口徹、新木優子、石田ゆり子、飯田基祐、眞島秀和、野崎萌香、長塚京三
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
演出:鈴木浩介、白木啓一郎(カンテレ)
チーフプロデューサー:笠置高弘(カンテレ)
プロデューサー:萩原崇(カンテレ)
制作著作:カンテレ
(c)関西テレビ
公式サイト:www.ktv.jp/crisis/

■公開情報
『銀魂』
出演:小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、柳楽優弥、新井浩文、吉沢亮、早見あかり、ムロツヨシ、長澤まさみ、岡田将生、佐藤二朗、菜々緒、安田顕、中村勘九郎、堂本剛
監督・脚本:福田雄一
原作:「銀魂」空知英秋(集英社「週刊少年ジャンプ」連載」
製作:「銀魂」製作委員会
制作プロダクション:プラスディー
配給:ワーナー・ブラザース映画
c)空知英秋/集英社(c)2017 映画「銀魂」製作委員会
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/gintama-film/

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