フジ月9、なぜ相葉雅紀に賭けた? 『貴族探偵』に漂う“ヒット作”の予感

 こうした流れを見ると、フジテレビが再び相葉雅紀を月9主演に起用したのは、真っ当な判断である。今作のプロデューサーには、『ようこそ、わが家へ』も手がけた羽鳥健一氏が名を連ねており、少なくともクオリティ面では期待ができそうだ。また、コメディタッチの推理ドラマである点も、2001年と2014年に同枠で放送された木村拓哉主演の名作『HERO』を彷彿とさせる。加えて、昨今のドラマの流行と、相葉のほんわかとしたキャラクターは、非常にマッチしているようにも思える。ドラマ評論家の成馬零一氏は、昨今のヒットドラマの傾向を、「見ている側が傷つかない優しい世界であり、好きな俳優が楽しい会話劇を延々と繰り返している」と分析しているが、相葉の“推理をしない探偵”というコミカルな役どころは、そうした作風の流行とも相性が良さそうだ。(参考:『カルテット』『オカムス』『大貧乏』……視聴者がドラマに求めるものはどう変化したか?

 嵐は現在、国民的アイドルグループとしてすでに頂点を極め、30代にしてキャリアの円熟期にあるが、俳優としての相葉は、まだ伸び代がある。相葉が本作でコメディ路線に活路を見出せば、『ようこそ、わが家へ』を超える代表作になる可能性さえあるだろう。いや、超えることができなければ、相葉とフジテレビの双方にとって打撃となるはずだ。実は下ネタが大好きだという相葉のコメディセンスに期待したい。

(文=松下博夫)

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