山崎賢人、ドM男子役で新境地! 『一週間フレンズ。』で流した涙の意味

 実際、途絶えがちな交換日記を、気持ちを新たに川口の家まで出向いて手渡しする山崎の行動はただ一途なだけでなく、自ら率先して他者と関わり合おうとしているように見える。これまでの役柄には見られなかった積極性は、まるで生の「手応え」のようなものを模索しているように思えてならない。まるで「マンガ実写化俳優」としてファンタジーを演じてきた山崎賢人から脱皮しようとしているかのようだ。その姿は、どこか恰好悪く三枚目的ですらあり、今までの役柄に比べてひとまわり小さくなったような感じさえある。しかしその分だけ、彼の内にこもった「熱量」はより高くなる。

 つまり、彼は「傷つくこと」を知ったのである。だからこそ、恋いこがれる相手が別の男と一緒に傘に入るのを尻目に、一人雨の中を疾走するシーンは今までにない哀切を帯びてくる。『オオカミ少女と黒王子』での疾走シーンも決して忘れることができないが、『一週間フレンズ。』でのそれは、誰かの元へ向かうものではなく、愛する相手と結ばれない現実からの「逃避」に他ならない。他者に近づき、他者から遠ざかる。この失恋の宿命を一身に受け止める山崎は、とうとう日記を燃やしてしまう。

 それは失恋を経験した男子がとる行動というより、やはりひと夏の恋の終わりに目処をつけようとする女の「諦念」そのものである。その瞳に湛えられた涙が頬を伝う瞬間、山崎賢人の表情にはせめぎ合いがあり、彼はいよいよただの「イケメン俳優」ではなくなる。

 さて、映画のラスト、「引き寄せる/引き寄せられる」という男女の関係性は見事に逆転する。二人は春先の屋上で手と手を取り結ぶ。そこで山崎賢人がみせる「満面の笑み」ははたして何を意味するのか。一つだけ確かなのは、その笑みに今度は川口春奈の方が引き寄せられているということである。

(文=加賀谷健)

■公開情報
『一週間フレンズ。』
全国公開中
監督:村上正典
脚本:泉澤陽子
原作:葉月抹茶『一週間フレンズ。』(ガンガンコミックスJOKER/スクウェア・エニックス刊)
主演:川口春奈、山崎賢人、松尾太陽、上杉柊平、高橋春織、古畑星夏、伊藤沙莉、甲本雅裕、国生さゆり、岡田圭右(ますだおかだ)、岩瀬亮、戸次重幸
配給:松竹株式会社
(c)2017 葉月抹茶/スクウェアエニックス・映画「一週間フレンズ。」製作委員会
公式サイト:ichifure.jp

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