『死霊のはらわた リターンズ』S2で新フェーズに突入! 森直人が“キャラもの”として考察
さらに、ブロックがいまも住む実家が見モノ。アッシュの亡き姉シェリルの部屋が当時――第一作『死霊のはらわた』(1981年)のまま残されているうえ、アッシュ自身の部屋が初公開。壁にはスージー・クアトロなど1970年代に流行ったロック・ミュージシャンのポスターや、ヌードグラビア。あとビール缶のコレクションが大量にあったりと、昔のボンクラ男子ぶりがうかがい知れる。
高校時代の奔放な女性関係も(自分から懐かしく語る形で)明かされ、またバーで麻薬入りのヤバすきるカクテルを提供している当時の悪友チェットも登場。
このチェットを演じているのが、サム・ライミの実弟テッド・ライミ! なおサムとテッドの実兄である脚本家アイヴァン・ライミは、シーズン2では第4話の脚本を担当している。
個人的に今回の前半は、シーズン1を凌ぐくらい楽しかった。シーズン2の後半はやや転調が起こり、“ある事情”でアッシュの動きが鈍くなる。そのぶんパブロやケリーら、脇キャラたちが頑張る――とだけ書いておこう。
ちなみに全体の作風は、シーズン1に比べると「初期ライミ感」は一気に薄くなった。おそらく意識的に後退させたのだと思う。なんせオリジナルのトレードマーク的なカメラワーク、“死霊POV”が出てこないのだから!
これはテレビシリーズとしての成功を受け、『死霊のはらわた』が新たなフェーズに突入した証と言えよう。筆者の印象では、シーズン2はハッキリと「キャラもの」にシフトした感がある。コミカル&ダーティーで、どこかキュートなエロ中年アッシュは、もう観ているだけで面白い。パブロ&ケリーとの三人組での珍道中ぶりも板についてきた。彼らの魅力さえキープできれば、もう演出は「ライミらしさ」に殊更こだわらなくても大丈夫ということだろう。
たとえばアッシュの愛車デルタに死霊が取り憑いて、恐怖の殺人車となるくだりは、ジョン・カーペンター監督の怪傑作『クリスティーン』(1983年)を彷彿させる。『死霊のはらわた』に異種のDNAが加わり始めている。シリーズの自己更新が無理なく起こっている。人気映画をテレビシリーズ化した最近の企画の中でも、もしかして本作は最たる成功例ではないか?
しかも残酷描写はますます過激にヒートアップ。「ここまでよくやるよ!」ってくらい、マジでエゲツない。特にアヴァンタイトルは毎回酷い(笑)。ギャグもバチ当たりの連続。アッシュが死体の男をケツから着ぐるみみたいに被ってクソまみれになるところとか、本当に悪趣味の極みだよなあ……自分は爆笑したけど。
その意味で攻めの姿勢はまったく崩していない。すでにシーズン3の制作も決定しているとのこと。ヤッてくれ、どんどんイッちゃってくれ!
参考:森直人の『死霊のはらわた リターンズ』評:これはサム・ライミの「初期衝動 リターンズ」だ!
■森直人(もり・なおと)
映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「朝日新聞」「キネマ旬報」「TV Bros.」「週刊文春」「メンズノンノ」「映画秘宝」などで定期的に執筆中。
■配信情報
『死霊のはらわた リターンズ』シーズン2
Huluにて毎週金曜日1話ずつ配信中(全10話)
製作総指揮:サム・ライミ(脚本)、ロブ・タパート、ブルース・キャンベル、クレッグ・ディグレゴリオ(ショーランナー)
出演:ブルース・キャンベル、ルーシー・ローレス、レイ・サンティアゴ、ダナ・デロレンゾ、リー・メイジャース、テッド・ライミ、ミッシェル・ハードほか
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