25年経ても就活の滑稽さは変わらない 『何者』と『就職戦線異状なし』の共通点

 朝井リョウの作り出す物語は、リアリティを重視して構成され、ドラマチックな飛躍を生み出さない。だからこそ、文学的なカタルシスは発生するが、それが映像に還元されるときには否が応でも見せ方の創意工夫が必要となる。『桐島、部活やめるってよ。』では時系列の組み立て方や、ラストの屋上シーンでの大団円でドラマ性を高める一方で、『武道館』では実在のアイドルグループを配役しリアリティを高める。

 今回の『何者』では、主人公たち6人の就職活動の経過を淡々と連ねながら、「ポツドール」という劇団を主宰する三浦大輔らしく、その一連を学生演劇のように扇情的なものに見立てる。劇中では、いわゆる「学生演劇らしさ」を否定的なものに捉えているだけに、SNSによる人間関係の希薄さという現代劇の常套手段や、就活のシステムにはめ込まれていく若者たちの群像を嘲笑う。それらを批判的に、そう、劇中の佐藤健演じる拓人のように俯瞰で分析するかのように見せるわけだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『何者』
全国公開中
原作:朝井リョウ(『何者』新潮文庫刊)
監督・脚本:三浦大輔
音楽:中田ヤスタカ 主題歌:「NANIMONO(feat.米津玄師)」中田ヤスタカ(ワーナーミュージック・ジャパン)
企画・プロデュース:川村元気
出演:佐藤健、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之
(c)2016映画「何者」製作委員会 
(c)2012 朝井リョウ/新潮社
公式サイト:http://nanimono-movie.com/

関連記事