夏ドラマ、各局“奇策”も視聴率アップ繋がらず ネットユーザー向け戦略の是非考える

 もう1つどうしてもふれておきたいのは、各局が“放送時間の短縮”という消極的な姿勢を見せたこと。『時をかける少女』(日本テレビ系)の放送がわずか5話に留まり、リオ五輪開幕直後の8月6日で終了したことを筆頭に、『女たちの特捜最前線』(テレビ朝日系)が6話、『ヤッさん~築地発!おいしい事件簿~』(テレビ東京系)が6話、『ノンママ白書』(フジテレビ系)が7話、『グ・ラ・メ~総理の料理番~』が8話、『仰げば尊し』が8話で終了してしまった。

 その他にも5作が9話で終了するなど、全体の約半数が2か月か、それ以下で早々に“店じまい”してしまう姿勢は、「各局が負け戦から撤退した」と思われかねない。ドラマの放送回数が減って増えるのは、既存バラエティー番組の特番。通常1時間の放送を2~3時間に拡大するのだが、テレビ局にとっては「毎期作品が変わるドラマとは異なり、固定ファンがいるため視聴率が取りやすい」という側面がある。

 確かに視聴率の面では無難な選択に違いないのだが、連ドラの放送回数が減ると、「どの局も特番バラエティー番組ばかり放送している」という期間が1か月を超え、視聴者はさすがに飽きてしまい、「テレビは全部同じでつまらない」というイメージが加速化しかねない。各局には目先の視聴率ばかり追うのではなく、広い視野を持って「多くの人々に3か月間しっかり見てもらえる連ドラに挑戦して欲しい」と切に願っている。

 最後に。今夏で光っていたのは、奇策を軸にしつつも、オーソドックスな人間ドラマを絡めて質の高い映像を提供していた4本の深夜ドラマ。『闇金ウシジマくん Season3』(TBS系)、『ラブラブエイリアン』(フジテレビ系)、『侠飯~おとこめし~』(テレビ東京系)、『こえ恋』(テレビ東京系)は、思い切った設定とセリフの妙で、ゴールデン・プライム帯(19~23時)の作品と同等以上の見応えがあった。まもなくはじまる秋ドラマでは、このような各局の積極性が見られることを期待したい。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間約20本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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