『レジェンド 狂気の美学』ブライアン・ヘルゲランド監督インタビュー

『レジェンド 狂気の美学』監督が語るトム・ハーディの演技力、そしてイーストウッドから学んだこと

「イーストウッドからは物語を伝える姿勢を学んだ」

ブライアン・ヘルゲランド監督

ーーあなたは脚本家としてキャリアをスタートさせていますよね。もともと監督になりたかったのでしょうか? それとも脚本を執筆しているうちに監督もやってみたくなったのでしょうか?

ヘルゲランド:だんだん変わっていったという感じかな。編集であろうが、撮影監督であろうが、役者であろうが、もちろん監督であろうが、映画に携わる人間すべてがフィルムメーカーだと僕は思っている。だから僕もこれまで自分のことを脚本家と思ったことがなくて、ずっとフィルムメーカーだと思って映画の仕事に携わってきた。ただ、映画業界では脚本家はフィルムメーカーとは別として考えられるケースが多いんだよね。僕がこれまで脚本を手がけてきた作品では、幸運なことに非常に力のあるたくさんの監督たちと仕事をすることができた。リチャード・ドナー監督と『陰謀のセオリー』で一緒に仕事をした時、やり方についていろいろと意見がぶつかったことがあったんだ。もちろんいい意味ではあるんだけどね。その時に彼に言われたのが、「もしも自分のビジョン通りにやりたかったら、君自身が監督をやるべきだ」ということだった。ちょうどその頃、彼はHBOのテレビドラマ『ハリウッド・ナイトメア』の製作総指揮を務めていたから、まずは1話を監督してみなさいということで、そこから僕の監督としてのキャリアが始まることになったんだ。

ーーそういうきっかけがあったんですね。ちなみに、脚本だけを手がける時と、監督と脚本両方を手がける時とで、作品作りのアプローチの仕方は変わりますか?

ヘルゲランド:そうだな……確かに変わるね。監督がほかにいる場合でも、脚本には脚本家の視点が反映されるべきだと僕は考えているが、それと同時に、その脚本は監督が綴りたい物語のためにあるべきだとも信じている。だから、ほかに監督がいる場合は、その監督のビジョンや物語の綴り方を確実に綴られるように脚本を考えるし、監督とビジョンを共有する必要があると思っている。意見が相違するのは構わないが、最終的には合致しないといけないからね。言い換えれば、脚本家としてだけ参加する時は、やはり監督のビジョンがまず第一にあるという考え方をしているということだね。監督が伝えたい物語を、監督が綴りたい形で一緒に作っていくということを意識する。作品や一緒に組む相手によって、それぞれやり方も違ったりするけどね。

 

ーーこれまで一緒に仕事をしてきた映画人でいうと、『ブラッド・ワーク』と『ミスティック・リバー』で一緒に組んだクリント・イーストウッド監督がいますよね。脚本家はあまり撮影現場に顔を出さないということをよく聞きますが、この2本では撮影に参加されたりしたのでしょうか?

ヘルゲランド:『ブラッド・ワーク』の時は、書き上げた脚本をクリントに渡して、あとはすべて彼に任せたから現場に行くことはなかったよ。でも、『ミスティック・リバー』の時は、最初のほうの撮影に参加したね。ただ、彼は現場で脚本を変えたりしないタイプの監督なんだ。脚本家が撮影現場に行く時は、現場で脚本を変える時のためにいるものなんだけど、クリントの撮影現場では僕は必要ないかなという感じだったね。でも、ボストンまでロケハンに行ったり、脚本やシーンについて話し合ったり、撮影に入る前のプリプロの段階では、クリントとはかなり綿密に仕事をしたよ。

ーー監督として、もしくはそれ以外でイーストウッドから学んだことはありますか?

ヘルゲランド:ただ本当に物語を伝えたい。そこに全力を捧ぐということを彼から学んだ。クリントは自分自身を作品の中に介在させないんだ。独自のスタイルや要素をあえて差し込むということはせずに、自分は一歩引いて、ストーリーを信頼して、それをなるべく明確にただ物語を伝える。そのような姿勢は彼から学んだことのひとつで、監督という大役を担う上で、すごく重要なことだと思って今も監督を続けているよ。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『レジェンド 狂気の美学』
6月18日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショー
監督・脚本:ブライアン・ヘルゲランド
出演:トム・ハーディ、エミリー・ブラウニング、タロン・エガートン、デヴィッド・シューリス、ポール・べタニー、クリストファー・エクルストン
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
2015年/イギリス/英語/131分/シネスコ/原題:「Legend」/R15+
(c)2015 STUDIOCANAL S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://www.legend-movie.net

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