『スポットライト』の紅一点、レイチェル・マクアダムス “癒しの名演技”はいかに磨かれたか
『ミーン・ガールズ』を観た時から、その才能を評価していたというリチャード・カーティス監督の『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』で、2度目のSF恋愛映画に起用されたマクアダムスは、再びタイムトラベラーの夫と結婚する。
人生の意味と家族の絆を描いた同作では、父と息子との絆を描くと同時に、マクアダムス演じるヒロインの“母性愛”を強く描き、ドナル・グリーソンが演じる主人公が、彼女と結ばれるために何度も繰り返すタイムトラベルの滑稽さと、最後に待ち受ける運命が、映画を観終わった後も、観客の心を揺さぶり続ける。マクアダムスの癒しの効果が観客の人生にも派生するのだ。
そして『スポットライト』に続いて出演した『サウスポー』も、日本での公開が決まった。ジェイク・ギレンホールが演じる43戦無敗のボクサーの妻を演じたマクアダムス。悲劇的な運命に巻き込まれてしまった妻と、残されたボクサーの夫、最愛の一人娘との家族の絆と再生を描いた同作は、アントワン・フークワ監督のシャープな演出で、本格的なボクシング映画としてもハイレベルな作品に仕上がっている。もちろん、ギレンホール演じる主人公のモチベーションとして、出番は少ないながらも、彼女の癒しの力は絶大的な効果を上げている。
全世界の観客の心に癒しの効果を与え続ける、カナダが産んだ名女優が、次に狙うべきなのは、やはりアカデミー主演女優賞だろう。原石はすでに磨かれて輝きをみせているのだから。
■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。
■公開情報
『スポットライト 世紀のスクープ』
4月15日(金)、TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開
監督:トム・マッカーシー
脚本:トム・マッカーシー、ジョシュ・シンガー
撮影:マサノブ・タカヤナギ
出演:マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、スタンリー・トゥッチ、リーヴ・シュレイバー ほか
提供:バップ、ロングライド
配給:ロングライド
2015年/アメリカ/英語/128分/原題:SPOTLIGHT/日本語字幕:齋藤敦子
Photo by Kerry Hayes (c)2015 SPOTLIGHT FILM, LLC
公式サイト:spotlight-scoop.com