『ミラクル・ニール!』サイモン・ペッグ、“愛されキャラ”の理由 イギリス人喜劇俳優の特異性とは

 

イノセントなオタク=サイモン・ペッグ

 一方のペッグは、7歳の時に両親の離婚を経験しているものの、イングランドののどかな街・グロスターシャー州の中流家庭で育った。また、ニック・フロストとともに公言しているとおり無神論者である。そんなペッグが幼いころに興味をひかれたのは『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』そして『ドクター・フー』といったSF作品、スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカスらの映画、そして音楽などのカルチャーだったのである。こういったものに触れることができたのは、母親が元女優、父親が元ミュージシャンという環境も影響しているのだろう。

 ペッグの自伝「Nerd Do Well」(オタクは成功する)はページのほとんどが映画のタイトルや俳優など埋め尽くされ、彼の人生がいかに映画で構成されているかを教えてくれる。また、ペッグと盟友エドガー・ライト監督が作り上げた『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!』などの作品には『ハート・ブルー』をはじめとする映画パロディが多数登場する。これは、彼らがシニカルな表現で批判することより、何かを好きであることをひたすらに語るイノセントなオタクであることの証なのである。屈折せず、好きなことをストレートに表現する人間は魅力的……実に当たり前のことがペッグがモテる理由なのではないだろうか。

 『ミラクル・ニール!』は、そんなペッグのイノセントな存在感と、毒のあるモンティ・パイソンの世界が上手く調和した素敵なコメディに仕上がっている。モンティ・パイソンファンとペッグ、どちらの魅力も味わえる入門編的な作品としておススメしたい。

■藤本 洋輔
京都育ちの映画好きのライター。趣味はボルダリングとパルクール(休止中)。 TRASH-UP!! などで主にアクション映画について書いています。Twitter

■公開情報
『ミラクル・ニール』
4月2日(土)渋谷シネクイントにて先行公開
4月9日(土)新宿バルト9ほか全国公開
監督:テリー・ジョーンズ
出演:サイモン・ペッグ、ケイト・ベッキンセール、ロビン・ウィリアムズ(声優)、モンティ・パイソン(声優)
配給:シンカ
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公式サイト:miracle-neil.jp

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