脚本家・演出家/登米裕一の日常的演技論

モテるドS男子に必要なのは女子力だった? Sexy Zone・中島健人の演技から考える

(C)タナカケンイチ

 若手の脚本家・演出家として活躍する登米裕一が、気になる俳優やドラマ・映画について日常的な視点から考察する連載企画。第三回は、『黒崎くんの言いなりになんてならない』で主演を務めるSexy Zone・中島健人が、なぜ“ドS男子”を演じてモテるのかを考察する。(編集部)

 最近、巷の女子の間では“ドS男子”が人気らしいですが、横柄な態度なのに女性にモテるなんてどういう事なのかと思いながら、映画『黒崎くんの言いなりになんてならない』を鑑賞させていただきました。

 映画の中で黒崎君を演じる中島健人君は、たしかにドSでした。けれど、きちんと他者に受け入れられる要素を持ったドS男子だったわけです。ドSだからモテると言うわけではなく、モテるドS男子もいれば、モテないドS男子もいるということなのだと思います。その違いは何なのか考えてみたいと思います。

 周りを見ていますと、必ずしも顔が良ければ受け入れられると言うわけでもないように見受けられます。もちろんカッコイイと多少許される事はあるのでしょうが、それよりも受け入れられるドS男子には共通して“女子力の高さ”があるように感じました。実はお菓子作りが得意だったり、楽器が弾けたり、掃除好きだったり、手がキレイだったり、肌がキレイだったり……。女性としてもリスペクト出来る要素や、繊細な才能を、モテるドS男子は持っています。それはいわゆる“ギャップ萌え”にも通じます。加えて、スイーツまで上手に作れてしまうような男子だからこそ「もっと上手いもん作れよ」という言葉にも説得力が宿るのです。喧嘩が強い、重いものが持てる、足が速いなど、そもそも男性が有利なポイントで、女性に対して偉そうな態度を取っているわけではないんです。乙女心を掴んだうえで、相手が求める発言をしているからこそ、彼らは受け入れられるのだと思います。

 さらに彼らは、ドSだからといって何でもかんでも口にするわけでもありません。映画の中で中島君は何度となく唾を飲み込む芝居をします。緊張したり、発言をためらったり、心理的な負荷を感じると、人間は唾を飲み込みます。それは、使う言葉を選ぶ繊細さがあるということの表れであり、相手へのリスペクトがあることの証でもあります。

 映画の後半でも、中島君は千葉雄大君演じる白河君に対して、真っ直ぐな瞳で見つめながらもグッと言葉を飲み込むシーンがありました。パーフェクトに見えるドS男子がたまに見せる葛藤はたまらないですよね。

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