『フラーハウス』は大人も楽しめるコメディに 前作『フルハウス』からの変化を読む

『フラーハウス』が描く家族の絆

 1987年から1995年に足掛け8年にわたり、本国アメリカはもちろん日本をはじめとする世界中のファミリー層に支持されてきた『フルハウス』。妻を自動車事故で亡くしたばかりの父親が、幼馴染の親友、そして亡き妻の弟という男ばかり3人で残された娘3人を育てるというシチュエーション・コメディだ。

 生意気盛りな小さな女の子たちに振り回される、子育て未経験の男たちの奮闘ぶりは、87年当時大ヒットしていた映画『スリーメン&ベビー』(87)の二番煎じのような印象を受け(プロデューサーのジェフ・フランクリンも姉妹に乳飲み子の三女を加えたことで、その設定に影響を与えたことを認めている)、放送開始当初はあまり視聴率が振るわなかったものの、血縁関係を乗り越えた大家族の絆をコミカルに描き、最終的に全192話に渡って全世界のお茶の間を楽しませてくれた。その『フルハウス』の涙の最終回を迎えてから約20年。タナー家の子供たちが大人になって帰ってきた。

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(C) Netflix. All Rights Reserved.

 放送終了後、タナー家の3人娘達がどのように暮らしてきたのかという事は、『フラーハウス』の中ではあまり詳細に描かれていない。分っていることはD.J.(キャンディス・キャメロン・ブレ)は、消防士の夫と結婚し、3人の子供を産んだが3人目を身ごもっている間に夫が殉職。シングルマザーの獣医としてあの懐かしいサンフランシスコの家で暮らしている。次女のステファニー(ジョディ・スウィーティン)は、DJとしてロンドンを基盤に世界中を飛び回り、三女のミシェルはニューヨークでファッション・デザイナーとして大活躍しているという設定。しかし残念な事に三女のミシェルは今回出演していない。

 シーズン1の第一話は、『フルハウス』のキャスト陣がそろって出演し、同窓会ムードの30分を味わうことができる。TVキャスターの父ダニー(ボブ・サゲット)が、ロサンゼルスで番組を担当する事になり、サンフランシスコの家を売却する前にもう一度家族が勢ぞろいして別れを惜しむ……というストーリーで、叔父のジェシー(ジョン・ステイモス)夫妻と双子の息子たちや、ラスベガスでコメディアンとして活躍しているジョーイ(デイブ・クーリエ)も帰ってくる。賑やかな大家族が勢ぞろいしている中、三女のミシェルの不在を“ニューヨークでファッション業界で忙しい”という楽屋オチ的なギャグに昇華させ、上手く処理し、ミシェルの不在を埋めるべく登板してきた、ほぼセミレギュラーの脇役キャラクターのキミー(アンドリア・バーバー)の存在が重要になってくる。

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(C) Netflix. All Rights Reserved.

 女癖の悪いラテン系の男フェルナンドと結婚して娘を産み別居。今はイベント・プランナーとして生計を立てているキミーだが、その性格は子供のころと変わらずアナーキーだ。

 子供のころからタナー家に勝手に上がり込み、その足の臭さ故に全員から嫌われていたが、D.J.の無二の親友として欠かせない存在のキミーが、シングルマザーとして、一人で生活していく事の不安を言葉に出来ないD.J.を、妹ステフと共にサポートする。こうして一つ屋根の下で暮らすことになったキミーの娘ラモーナとD.J.の息子たちとの関係が“血縁関係の無い家族の絆”という『フルハウス』のテーマを上手く受け継いだ。

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