“内面の声”を描くのが新たなトレンドに? NHKドラマ10『わたしをみつけて』を分析
初回から延々と続く彼女のモノローグは、そんな彼女の内面の孤独と内なる悲痛な叫びを描き出す。「わたしは、いい子なんかじゃない」、「だけど、いい子じゃなければ、この場所にはいられない」。第一話のサブタイトルは、「ずっと、泣きたかった」。そして12月1日に放送される第二話のタイトルは、「もう嘘はつかない」。新看護師長・藤堂らとの出会いを通じて、彼女の心は、どんな変化をみせてゆくのだろうか。そして、「わたしをみつけて」という切実なタイトルが意味するものとは、果たして何なのか?
ある意味、『きみはいい子』と双子のような作品といってもいいだろう本作。しかし、初回の放送を観たあと、筆者の脳裏に浮かんだのは、今年観た(観ている)2つの作品――アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』と、現在放送中のドラマ『偽装の夫婦』(日テレ系)だった。過去のトラウマから自ら心を閉ざし、言葉を失ってしまった少女が、ミュージカルの制作を通じて仲間たちと出会い心を開き、やがて自分自身の「言葉」を取り戻していくさまを描いた『ここさけ』。そして、若い頃の出来事によって心を閉ざし、以降表面的な微笑みを湛えながら他者と深く関係性を結ぶことを避け、ただしその内面では人々に悪態をつきまくっていた主人公が、かつての恋人との再会を通じて、次第に本当の「言葉」を話すようになる『偽装の夫婦』。
「本当の声を聞かせておくれよ」――かつて、そう歌ったのはブルーハーツだけれども、この類似性はいったい何を意味しているのだろうか。「本当の声」、すなわち、求められる役割や場の空気(あるいはSNSやLINEなどのコミュニケーションツール)といったものに縛られることなく、自らの内面の言葉を、そのままの形で誰かにぶつけてみせること。それが、昨今のトレンドなのだろうか? その意味でも、ひとつ重要な作品となる可能性を持っているように思われるドラマ『わたしをみつけて』。初回の再放送は、本日月曜の深夜24時10分から。そして第二話の放送は、明日火曜の22時から、いずれもNHK総合にて。上記の原稿を読んで気になった方は、是非チェックしてみることをお勧めしたい。
(文=麦倉正樹)