第28回東京国際映画祭、グランプリ決定 精神科医の挑戦描いたブラジル映画『ニーゼ』が受賞

東京国際映画祭、グランプリは『ニーゼ』

 第28回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが昨日10月31日にTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて行われ、ブラジル映画『ニーゼ』が最高賞の東京グランプリに輝いた。

 『ニーゼ』は、ショック療法が行われている精神病院に着任した女医ニーゼが、芸術療法を含む画期的な改革案を導入しようとするも、男性社会の厚い壁にぶつかりながら苦闘する模様を描いた、実話を基にした物語。

20151101-tiff07.jpg
『ニーゼ』(c) TvZero

 今年度の審査委員長を務めたブライアン・シンガーは、「ファンタジーであろうと実話であろうと、作品をつくるにあたって大事なのは、観客が本当だと思うことだと思います。それを考えた時に、この作品は本当にその要素が全部含まれていました。寂しさもあり、ユーモアもあり、勝負もあり。なのでこの作品に決めました」と語った。

 グランプリを受賞したホベルト・ベルリネール監督は、「時々、自分が特別なことをしていると感じる時があります。まさにこの作品をつくっている時にそう感じました。病院の精神科の患者と5ヶ月ほど一緒に過ごしたのですが、彼らは私たちの撮影に付き合ってくれて、スタッフにもなり、キャストの一員にもなったわけです。こういった体験が私の人生を変えました。それは、この映画の中に全部出ています。この映画を観ていただければ、全部感じていただけると思います」と感謝の気持ちを述べた。

20151101-tiff03.JPG
『ニーゼ』が東京グランプリに輝いたホベルト・ベルリネール監督と審査委員長を務めたブライアン・シンガー(C)2015 TIFF

 主演のグロリア・ピレスが最優秀女優賞を受賞した『ニーゼ』は、グランプリとあわせてW受賞となった。最優秀男優賞は、地雷の撤去作業に動員された少年兵と指揮官を描いた『地雷と少年兵』のローラン・モラーとルイス・ホフマンに贈られた。審査員特別賞には、フランスの人気コメディアンのケイロンが父の若き日を演じ自らメガホンをとった『スリー・オブ・アス』、最優秀監督賞には、山上の厳しい生き方にリアルに迫った『カランダールの雪』のムスタファ・カラが、一般観客から最も多くの支持を得た作品に贈られる観客賞には、エドアルド・ファルコーネ監督のイタリア産コメディ『神様の思し召し』が選ばれた。

 10月22日から31日までの10日間にわたって開催された第28回東京国際映画祭。期間中の上映作品本数は207本、劇場動員数は63,738人と発表された。

20151101-tiff006.JPG
ホベルト・ベルリネール監督(C)2015 TIFF

第28回東京国際映画祭 受賞作品・受賞者

■コンペティション部門
東京グランプリ:『ニーゼ』(監督:ホベルト・ベリネール)
審査員特別賞:『スリー・オブ・アス』(監督:ケイロン)
最優秀監督賞:ムスタファ・カラ(作品:『カランダールの雪』)
最優秀女優賞:グロリア・ピレス(作品:『ニーゼ』)
最優秀男優賞:ローラン・モラー、ルイス・ホフマン(作品:『地雷と少年兵』)
最優秀芸術貢献賞:『家族の映画』(監督:オルモ・オメルズ)
観客賞:『神様の思し召し』(監督:エドアルド・ファルコーネ)
WOWOW賞:『カランダールの雪』(監督:ムスタファ・カラ)

■アジアの未来部門
作品賞:『孤島の葬列』(監督:ピムパカー・トーウィラ)
国際交流基金アジアセンター特別賞:『告別』(監督:デグナー)

■日本映画スプラッシュ部門
作品賞:『ケンとカズ』(監督:小路紘史)

■"SAMURAI(サムライ)"賞:山田洋次、ジョン・ウー
■ARIGATO(ありがとう)賞:樹木希林、日野晃博、広瀬すず、細田守、リリー・フランキー

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「レポート」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる