【作家コメントあり】浅田弘幸画業40周年展『Still Light/それでも、光はある』レポ

漫画家・浅田弘幸の画業40周年と代表作『テガミバチ』の20周年を記念する展覧会『Still Light/それでも、光はある』が、現在、東京・渋谷のギャラリー「Déesse space caiman Shibuya」にて開催中だ。
同展では、『テガミバチ』の原画を中心に、さまざまなイラスト作品(ラフ画も含む)や、テレビアニメのキャラクター原案ワークス(手塚治虫原作『どろろ』ほか)などが展示され、ジャンルを横断する漫画家・浅田弘幸の40年の軌跡を辿ることができる(2026年12月27日まで開催)。

浅田弘幸は1968年生まれ。1986年、「幽界へ…」にてデビュー(「月刊少年ジャンプ漫画大賞」準入選)。その後、『BADだねヨシオくん!』、『眠兎』、『蓮華』の連載を経て、バスケットボールに青春を懸けた少年たちの群像劇『I’ll~アイル~』(1995年~2004年)でブレイク。また、2006年に連載開始したファンタジー作品『テガミバチ』(~2015年)は、テレビアニメ化もされ、さらに多くの読者を獲得した。
「こころ」を運ぶ、郵便配達員たちの物語
『テガミバチ』の舞台は、「夜が明けることのない星」。その星では、首都を照らしている人工太陽の光が届かない、暗く危険な地域(アンバーグラウンド)がひろがっていた。
通称「テガミバチ」――国家公務郵便配達員・BEEである彼らの職務は、その危険な地域を旅して、人々の「こころ」が込められた「テガミ」を各地に届けることだった。
主人公は、母親と生き別れになった7歳の少年、ラグ・シーイング。孤独の身になった彼は、「テガミ」として、知人が暮らす遠くの港町に運ばれることになるのだが、そんな自分を守り、目的地まで無事に届けてくれた、テガミバチのゴーシュ・スエードに憧れを抱く。
5年後、テガミバチの採用試験に合格したラグは、最高位のテガミバチ「ヘッド・ビー」を目指すため、日々、配達作業に奮闘するのだったが、なぜか尊敬するゴーシュは「こころ」を失い、かつての“彼”ではなくなっていたのだった……。

「Still Light」という言葉が意味するもの
今回の展覧会の見どころは、やはり、アナログ原画ならではの生々しさを、肌で感じられるところだろう。とりわけ、浅田弘幸の絵の特徴でもある、シャープな線の艶めかしさと、「白」を引き立てる「黒」の美しさは、ぜひ肉眼で確認してほしいものである(現在の浅田は、おもにデジタル・ツールを使って作画しているため、おそらく『テガミバチ』が、最後のアナログ原画による浅田弘幸の長編漫画ということになるだろう)。
なお、今回の展覧会では、主人公のラグではなく、準主役のゴーシュが描かれた原画が数多く選ばれている(展覧会のキーヴィジュアルも、ゴーシュの絵である)。また、派手なバトルの場面よりも、人と人とが「こころ」でつながるような場面が意図的に選ばれている。
それはなぜか。それはたぶん、ラグにとっての「光」が、ゴーシュだったからだ。
そう、メンターであるゴーシュがいなければ、ラグがテガミバチになることはなかっただろうし、テガミバチにならなければ、のちに頼れる仲間たちと出会い、母親と再び巡り合うこともなかったかもしれない。あらためていうまでもなく、目の前を照らしてくれる「光」がなければ、人は前に進むことはできないのである。 そしてこれは、作者である浅田弘幸自身、画業40周年を迎えてもなお、ゴーシュというキャラクターが象徴する「光」を求めて、前進し続けていることの表われでもあるだろう。「Still Light」(まだ明るい)――「それでも、光はある」のだ。

浅田弘幸氏からのメッセージ
さて、去る10月24日に開かれた同展の内覧会にて、短い時間ではあったが、浅田氏と少し話すことができた。本サイトのためにコメントもいただけたので、その言葉を最後に紹介したい。
「今回、画業40周年記念の展覧会ということで、タイトルを決めるのに少し時間がかかりました。たとえば、『On the Road Again』というタイトルにして、“これからもやるぞ”という強い意志を表わすか、あるいは、『LAST WALTZ』にして、“終わりかけの自分”を表わすか。でも、そのどちらも、いまの自分なんですよ。だから、『Still Light/それでも、光はある』というタイトルは、現在の自分の正直な気持ちを表わした言葉なんです。展覧会は12月27日までやっているので、よかったら遊びに来てください」
■イベント情報
浅田弘幸画業40周年記念、『テガミバチ』20周年記念展『Still Light/それでも、光はある』
会場:Déesse space caiman shibuya(東京都渋谷区神南1-13-13 Idoビル B1)
会期:2026年10月24日(土)~ 12月27日(日)
前期:2026年10月24日(土)~ 11月22日(日)
後期:2026年11月28日(土)~ 12月27日(日)
※前期、後期で一部展示替え、追加などが行われる予定。
開廊時間:12:00〜20:00(最終入場 19:45)
入場料:
チェキカード+ゴムバングル付き:700円
アクキー+チェキカード+ゴムバングル付き:1500円
休廊日:月・火・水
公式HP:https://dscaiman.com/exhibition/still-light



























