『地球の歩き方 スター・ウォーズ』ガチすぎる編集に驚愕! チュニジアなど実際のロケ地ガイドも

 8月6日のAmazon売れ筋ランキング「本」部門で37位にランクインしていたのが、『地球の歩き方 スター・ウォーズ』(Gakken)である。あの『地球の歩き方』が、映画『スター・ウォーズ』シリーズの世界を題材に作った一冊だ。

『地球の歩き方』が描く銀河系の魅力

『地球の歩き方 スター・ウォーズ』(Gakken)

 映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』の公開により、新規のファンにも広がりを見せている『スター・ウォーズ』シリーズ。だが50年近い歴史のあるシリーズでもあり、ナンバリングタイトルの映画だけで9作、さらに関連する映画・アニメ・ドラマなどのスピンオフ作品も含めると膨大な作品点数になる。「『マンダロリアン・アンド・グローグー』は面白かったけど、それ以外の作品はいったいどうすれば……」「そもそも『スター・ウォーズ』ってなんなの……?」という気持ちになった人もいるのではないだろうか。

 そういった新規ファンに向けてオススメしたいのが、この『地球の歩き方 スター・ウォーズ』である。本書はルーカスフィルム公認書籍となっており、2026年現在の『スター・ウォーズ』の設定に準じて内容が編集されている(『スター・ウォーズ』の公式設定は時期によって内容が異なる)。銀河系を旅するためのガイドブックという体裁で、『スター・ウォーズ』に登場する各惑星やロケーション、文化や歴史といった要素を解説したガイドブックなので、作品世界のわかりやすい解説書としてうってつけなのだ。

 『地球の歩き方』フォーマットのガイドブックになっている「銀河惑星案内」の章では、『スター・ウォーズ』の舞台となる銀河系全体の地図をスタートに、銀河のエリアごとに主要作品に登場した惑星を紹介。映画に出てきたスポットを観光ガイドのフォーマットで紹介し、その星がどのような星なのかを解説する。ファンの年代によっては記憶に残っている星やロケーションがまちまちのはずだが、新旧の作品に登場した星が全部まとめて解説されているので、オールドファンでも「そういえばこんな星もあったな……」と楽しく読めるはずだ。

 旅行ガイドとして作られている本なので、銀河を旅するためのプランニングや楽しみ方についての記事も充実。旅の持ち物や習慣・マナー、食事といったトピックについて、劇中の描写を引きつつ解説している。遊び心を交えながら『スター・ウォーズ』の世界を解説したテキストとして、こちらも楽しい仕上がりである。

制作陣へのリスペクトとリアルな聖地巡礼

 が、本書のいいところは「映像作品としての『スター・ウォーズ』」をきっちり解説しようという意図が見えるところではないだろうか。『地球の歩き方 スター・ウォーズ』と銘打たれた本ではあるが、本書は『スター・ウォーズ』作中世界の本として書かれたパートと、我々の住む現実の世界のエンターテイメント映画としての『スター・ウォーズ』を解説したパートに分かれている。そして映画としての『スター・ウォーズ』を解説したパートが、作品に関する膨大な情報をうまく整理して、コンパクトかつ丁寧に作られているのである。

 本書はまず巻頭でシリーズの創造主であるジョージ・ルーカスの半生を簡単に紹介。さらにシリーズの特殊効果を支え続けてきた制作会社インダストリアル・ライト・アンド・マジック(ILM)の歴史をコンパクトにまとめたページや、音楽を担当したジョン・ウィリアムズの功績をまとめたページなども必要な情報が簡潔にまとまっている。最新作やディズニーにルーカスフィルムが買収された後のタイトルにばかり注目せず、50年近く前にシリーズのコアな部分を作りあげた監督や、特撮部分を担当したクリエイター集団についてページを割いて説明しているあたり、かなり強火のオールドファンが編集している匂いを感じる。

 そして『地球の歩き方』の本領を発揮していると言えるのが、実際の映画のロケ地の観光ガイドが掲載されている点である。『スター・ウォーズ』のロケ地として有名なのが、砂漠の星タトゥイーンのシーンが数多く撮影されたチュニジアだろう。チュニジア国内各地に点在しているロケ地の様子を、アクセス方法も併せて掲載しつつ紹介しているページは、まさに『地球の歩き方』ならでは。チュニジア以外にも、宮殿などのシーンが撮影されたことで知られるイタリアやスペインといったヨーロッパ圏内のロケ地や、エンドアの森林のシーンなどが撮影されたアメリカのロケ地を細かく紹介。いずれも日本からのアクセス方法が掲載されているので、ロケ地に行ってみたいファンにとっても有益な内容となっている。

マニアも納得のVFX解説!信頼できる入門書としての真価

 そしてもうひとつ書いておきたいのが、「ダイクストラ・フレックス」についてだ。第一作となった『新たなる希望』以降、宇宙船が飛ぶシーンなどで効果的に使われたことで知られているのが、いわゆるモーションコントロールカメラである。このカメラは動きをコンピューターで制御することで何度も同じ経路で移動させることができるため、複数のミニチュアをブルーバックで撮影したのち、別撮りした動きのある背景と組み合わせれば、何機もの宇宙船が飛び回りながら空中戦をする複雑なシーンも撮影できた。このモーションコントロールカメラをILM初代スーパーバイザーであるジョン・ダイクストラが改良し、実際に『スター・ウォーズ』の撮影で使われたのが、「ダイクストラ・フレックス」と呼ばれるシステムである。

 通常、『スター・ウォーズ』で用いられた特撮技術について解説される場合は、「モーションコントロールカメラ」という名称を用いるのが一般的である。「モーションをコントロールできるカメラなんだな」と意味も伝わりやすいし、この名称でも間違ってはいない。が、厳密にはモーションコントロールカメラとダイクストラ・フレックスは異なるものであり、ゆえにある程度年季の入った『スター・ウォーズ』のファンは「ダイクストラ・フレックス」という名称にこだわりがちなのである。

 『地球の歩き方 スター・ウォーズ』を読んでいてグッときたのは、このダイクストラ・フレックスについてちゃんとページを割いて解説し、他のページにおいてもわざわざ「ダイクストラ・フレックス」という名称を用いて記事を書いている点だ。先ほど書いたように、別に「モーションコントロールカメラ」でも意味は通じるし、決して完全に間違いでもない。しかし、ダイクストラ・フレックスは『スター・ウォーズ』のVFXを可能にした革新的システムであり、その重要度を知っているのであれば「ダイクストラ・フレックス」とちゃんと表記したいはず。すなわち『スター・ウォーズ』についてある程度以上の知識と熱量があることを示すベンチマークのような用語がダイクストラ・フレックスであり、このポイントについて簡潔ながらしっかりと解説している本書は、信用に足る解説書と言えるのではないだろうか。

 作品解説のパートも過不足なくまとまっており、複雑極まるスピンオフ作品についても必要最小限にとどめた内容で、全体を通して読むと「『スター・ウォーズ』についてこれから知りたい人に向けた本にしよう」という意図がはっきり伝わってくる。そして実際に作品の概要と作品内の世界観が飲み込みやすくまとまっており、これから『スター・ウォーズ』を知りたい人向けの解説書という狙いを外していない点は、プロの仕事と言えるだろう。また、ロケ地への旅行のプロセスがまとめて書かれている点などは本書が『地球の歩き方』である意味が感じられ、コアなファンが読んでも面白いはず。ファン歴の長さに関わらず、『スター・ウォーズ』に興味のある読者ならば楽しく読めるであろう一冊だ。

■書誌情報
『地球の歩き方 スター・ウォーズ』
編集:地球の歩き方編集室
価格:2,750円
発売日:2026年7月31日
出版社:Gakken

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