なぜダイアン津田は愛されキャラになったのか? 初の単著『津田日記』に見る“常識人”としての横顔

 お笑いコンビ・ダイアンの津田篤宏が、8月1日スタートのテレビ朝日系連続ドラマ『タイムトラベルダディ』で主演を務めることが発表された。津田にとって初のドラマ主演となる。

 一時期は「お笑い月見草」と呼ばれるほど華がない(が実力はある)存在としていじられていたダイアンだが、ここ数年で全国区のブレークを果たした。とくに津田は、『水曜日のダウンタウン』の「名探偵津田」シリーズでの活躍をはじめ、いまやテレビで見ない日のない超売れっ子である。今回の『タイムトラベルダディ』は、脚本を務める上田誠(劇団「ヨーロッパ企画」主宰)が「津田さんをめがけて話を考えていきました」と語る当て書き。おそらく、「名探偵津田」でもおなじみとなった津田の“イライラ癇癪小物キャラ”が存分に発揮されることだろう(タイムトラベルという設定も昨年の「名探偵津田」を思わせる)。

 しかし、ダイアンファンの筆者が思うに、津田の魅力は“イライラ癇癪小物キャラ”だけではない。というか、みんなもそう思っているからこそ津田のことが好きなのだと思う。そして、いまやまさかの“じゃない方”扱いになりつつある相方・ユースケの魅力ももっと多くのひとに知ってほしい。津田の“もうひとつの顔”も、ユースケとの関係のなかでよりくっきり見えてくるものである。

 じつは今年はダイアンのふたりがそろって初の単著を出した年でもある。津田の『津田日記』(新潮社)とユースケの『なんなん自分』(KDOKAWA)だ。せっかくなので、両著を紐解きながらごく簡単にふたりの魅力を紹介したい。

津田は常識人

 『津田日記』は、彼が2025年の1月1日から12月31日まで欠かさずつけた簡単な日記(メモに近い)に、何本かコラムがついたものだ。

 期待通り、この本でも津田の“イライラ癇癪小物キャラ”は存分に発揮されている。「(“津田軍団”に所属する後輩の)関町の立ちいふるまいがちょっと思ってたのとちがった」とか(関町とのわだかまりが生むちょっとした心理ドラマが後半の読みどころだ)、「「ジャイキリダイアン」収録。◯◯はダメ」とか(ちょくちょく事務所や編集サイドからのNGで伏字になっている)、頻繁に文句を書いている。「「鬼レンチャン」ゴルフの収録、キンコンかじと一緒。マジでむかついた。デビューしてから一つも変わってない」と、一時期バラエティを軽く賑わせたキングコング梶原との“ビーフ”の発端も正直に書いている。

 もちろん文句だけでなく、「ゴルフに行く、ベスト!! 86!! 最高」と素直に喜びを表現するところもある。津田の人間臭さが出ていて良い。あと、本人もあとがきでセルフツッコミを入れているが、ゴルフに行き過ぎである。芸能人って忙しい仕事の合間にこんなにゴルフに行ってるのかと驚く(津田だけかもしれないが)。

 ここまでのあたりは「名探偵津田」的な津田のみを知っている方でも「そんな感じだろうな」と思うところだろう。もちろんこれがまごうことなき津田らしさである。

 ただ他方で、津田はとにかく常識人である。ある日は「朝から韓国ロケ。めちゃくちゃ食べた。IKKOさんと。楽しかった。すごく前向きで、いい人。IKKOさんをくさすようなツッコミはしたくない」とシンプルに“良いやつ”だ。また、「「ダイアンなり」ロケ、家帰って保険の整理をする。まだまだがんばらねば」とか、「娘の運動会中止。この日しか行けないので泣きそう」とか、夫として父として一家を支える姿も垣間見える。また、ファンならだれもが知るところだが、津田は料理が得意だ。日記を読んでいると家族に料理をふるまっていることも多いし、家族のいない東京の部屋に泊まるときもちゃんと自炊していて偉い。ふつうに良いパパである。

 この常識人の顔があるからこそ、『タイムトラベルダディ』の“家族のために奮闘するパパ”という設定が彼に振られるのだろう。バラエティで炸裂する“イライラ癇癪小物キャラ”がわれわれの日常的な感覚と地続きの“人間臭さ”としてウケるのも、この前提があるがゆえのことだと思う。

 そして、この常識人の顔がより顕著になるのが、相方・ユースケとのやりとりである。

ユースケは控えめな弟

 多くの関西人が知っているように、ユースケは決してダイアンの“じゃない方”ではない。ダイアンを成立させているのは、ユースケのセンスあふれるボケである(そこに津田のオーソドックスでキレのあるツッコミが乗っかる)。ネタを書いているのももちろんユースケだ。その独特のセンスを言葉で表現することは難しい。ただ、そのユースケのセンスを文章のかたちで感じることができるのが、エッセイ集『なんなん自分』なのである。

 たとえば冒頭のエッセイ「注意するか、しないか」。最近サウナにハマっているというユースケが、「ドアを閉めない」「水風呂で潜水する」などのマナー違反を注意したいがなかなかできないという、言ってしまえばなんてことはない話である。このなんてことない話に独特のおかしみを帯びさせていくのがユースケ的なセンスだ。

 本の表紙になっているのがその場面で、サウナで身体が火照り赤くなったユースケが水風呂に浸かるおっさんを見ている。おっさんは口のところまで水に浸かり、潜水しているかいないかの絶妙なラインを突いてマナー違反をしてくる。ユースケは戸惑って注意できない。「次は絶対に捕まえたるからな」と胸に誓いつつ、「ストレスを発散しに行ってるはずのサウナで、余計にストレスを溜めて」しまう。表紙のふたりの絶妙な表情が良い。文章を読んでいてもこの情景が浮かんでくるかのようだ。

 『なんなん自分』では、こんなどことなくおかしい話にくわえて、家族への思いや「M-1」への思いもつづられる。とくに印象的なのは、姉とのエピソードを語った「優秀な姉ちゃんとヘタレで卑怯な弟」である。

 ユースケの3歳上の姉ちゃんは、「子供の頃から優秀で勉強もスポーツもよくでき」た。対してユースケは、「わがままで勉強もできない典型的な末っ子という感じ」だったという。この文章では、そんなユースケが子どものころ姉ちゃんにどんな迷惑をかけたかという話や、大人になってからの姉弟の胸が熱くなるエピソードが語られる。

 この“ヘタレな弟”というのが、ユースケ的なセンスの根っこにあるものだと思う。バラエティ番組を見ていても、ユースケはとにかくシャイだ。しっかりものの姉のかげにかくれながらこっそり面白いことを考えている弟がそのまま芸人になったという感じである。

 これはダイアンのふたりの関係についても言える。ふたりは中学の同級生だが、津田がどちらかというと兄的にふるまう場面が時折ある。ふたりのラジオやYouTubeで、世慣れしないシャイなユースケを心配するような顔を津田がたまに見せるのである。

 そんなわけで、ふだんは“イライラ癇癪小物キャラ”でギャーギャー言っているイメージの津田だが、相方や周囲との関係のなかでは基本的に“常識人”の側にいる。その姿が“癇癪”の前提となる安心感や見る側との地続き感を与えてくれるがゆえに、彼はここまでの人気者になったのではないだろうか――。

 正直、ファンとしてこの短い記事でダイアンの魅力をどれだけ伝えることができたかはやや心もとない。ただ、とりあえずふたりの本を手にとってみようかな、とだけ思ってもらえたら幸いである。

■書誌情報
『津田日記』
著者:津田篤宏(ダイアン)
価格:1,760円(税込)
発売日:2026年5月27日
出版社:新潮社

『なんなん自分』
著者:ユースケ(ダイアン)
価格:1,870円(税込)
発売日:2026年1月21日
出版社:KADOKAWA

関連記事