中川大志やM!LKも登場! 業界のリアルに迫る話題書『エンタメおしごと図鑑』編集者に聞く制作裏話

エンタメおしごと研究会(編)『芸能・アニメ・ゲーム・音楽・マンガ エンタメおしごと図鑑』(サンクチュアリ出版)

 舞台の裏側には、無数の役割がある――。アイドルや俳優といった表舞台の仕事から、マネージャー、ヘアメイク、スタイリスト、編集者、アニメーター、ゲームプログラマーまで。エンタメの世界を“憧れ”としてだけでなく、具体的な“仕事”として見せる1冊『エンタメおしごと図鑑』が、SDP(スターダストピクチャーズ)とサンクチュアリ出版の共同制作によって誕生した。

 本書で紹介されるのは、エンタメ業界を支える149の職種。全ページフルカラー、ふりがな付きで、小学校高学年からでも読みやすく、子どもたちが「なりたい」を見つける入り口としてはもちろん、大人が読んでも自分の興味や適性を見つめ直すきっかけになりそうだ。さらに、M!LKや中川大志ら“先輩”たちのインタビューに加え、現場で働く人々の1日のスケジュールや働き方、収入面など、華やかさだけではないリアルにも触れられる。

 エンタメを“仕事”として伝えるために、作り手たちは何を考え、何を大切にしたのか。本書の編集者であるSDPの石田綾、サンクチュアリ出版の吉田麻衣子に、この本の舞台裏を聞いた。

2社の強みから生まれた、“エンタメのおしごと図鑑”

吉田麻衣子氏

――この『エンタメおしごと図鑑』というありそうでなかった本は、どのように生まれたのでしょうか?

吉田麻衣子(以下、吉田):2年ほど前に「SDPとサンクチュアリ出版で本を作りましょう」という話が立ち上がりました。とはいえ、初めての取り組みでしたので、まずは毎月1回、定例ミーティングを行って、アイデアを話し合うところから始めました。

石田綾(以下、石田):本当にいろいろな企画が出ました。そのなかで、せっかく作るならば子どもから大人まで読めるものにしたい、という話になって。そこから、形になっていったのがエンタメ業界に特化した『おしごと図鑑』でした。

吉田:芸能事務所「スターダストプロモーション」をルーツに持つSDPと、「本を読まない人のための出版社」を掲げるサンクチュアリ出版の、どちらの強みも活かせるんじゃないかと。とはいえ、そこまで到達するのに、およそ1年くらいかかりましたね。

――1年も!? かなり時間をかけて企画を練られたんですね。

吉田:そうですね。幸い「いつまでに本を1冊出すように」というノルマがなかったので、じっくりと考えることができました。毎月、SDPさんのオフィスにお邪魔して、おしゃべりして、「いい企画が出たらやりましょう」みたいな感じで。その時間も楽しかったですよね。

石田:そうですね(笑)。全員で5人くらいのチームでしたので、アットホームな感じで進めていきました。

――帯に「149のお仕事を紹介」とあったのですが、改めてかなりのボリュームですよね。

吉田:当初は、もっとすごい数になっていたんです。というのも、どこまでがエンタメ業界に入るのか、というところから考える必要があって。例えば、遊園地とかテーマパークはエンタメ業界に入るのかどうか……とか。さらに、どの会社にも事務や営業といった職種もあるじゃないですか。そうした職種をどこまで入れていくのかを精査するのに、まず時間がかかりました。一応、今作ではクリエイティブに関わっているところで線引きをしましたが、それでもかなり絞った結果の149でした。

石田綾氏

――たしかに、どこまでが「エンタメのお仕事」かと聞かれると難しいですね。では、そこからどのように取材や執筆をされていったのでしょうか?

吉田:出版系、芸能系と、それぞれの得意分野ごとに章で分けて担当していきました。理想としては、全ての職種に対してインタビューを行いたい気持ちだったんですが、残念ながらそれが実現できるほどのページ数がなく(笑)。直接お話を伺うことが難しい場合は、メール取材に応じていただいたり、監修の方にその職種の実態をお聞きしたりとリサーチしながら作っていきました。とにかく今回は、関わる方が多かったのが大変なポイントでしたね。

石田:章ごとに分けたので、全体的なトーンを揃えて、最後には全員で読んで確認して……というのも、また大変なところではありました。

――実際に調べていく中で、新しい発見や気づきはありましたか?

吉田:社会に出ている大人でも、その職種名は知っていても、実際にどうやってその職種に就いて、どんな風に働いているのか、細かなことまで知らないということにも気づかされました。個人的に面白いなと思ったのは、フォーリーアーティストという効果音を作る仕事。キャベツを切るときの音って、タワシを使っているんですって。そういうのってなかなか日常では知ることができないものだったので、とても興味深かったです。

石田:私にとっては、まずこの本作りそのものがとても勉強になりましたね。同じ「編集」という職種でも、私は普段、写真集やカレンダーをメインに制作しているので、こういう実用書は初めてでした。手掛けるものによっても仕事内容が大きく変わることがある、というのもこの本を通じて学んだことです。

子どもに届く読みやすさと、大人も納得するリアル

――そうした違いを踏まえていくと、どんどん複雑で難しいものになりそうですが、今作は本当に読みやすくまとめられていますね。

吉田:ありがとうございます。苦労話でいうと、各職業のイラストをできる限り入れていこうとなったんですが、今はどの仕事も大体パソコンで作業するものが多いんですよね。そこをイラストレーターさんがうまく描き分けてくれました。それも、イラストレーターさんの大変なところですね(笑)。それから、すべての漢字にルビをふって、子どもたちにもスムーズに読み進められるようにこだわりました。一方で、夢の部分だけでなく、給与や勤務時間など現実的な部分はリアルに書きたいという話もあって。「あのウワサって本当?」という項目も、一般的なイメージとか思い込みに対して答えていこうという形で作られたコーナーです。

――「何さいまで働ける?」という項目が、とても興味深かったです。

石田:やはり、エンタメ業界というのは好きを原動力にパワフルに働くイメージがあるので、長く活躍できるのかどうかも、将来を考える上ではチェックしておくべきことかなと。

――「1カ月にこれだけ生活費がかかる」というのもリアルでちょっと驚きました。

吉田:実はこの本を作るにあたって、小学生たちにインタビューしたんです。そのときに、「1カ月いくらで食べていけるか知ってる?」と聞いてみたところ、「7万円くらい?」と、みんなわからないんですよね(笑)。どうしても「夢を追う=食っていけない」みたいなイメージがあると思うので、仕事を選ぶときには生活していくお金を稼ぐという感覚をどこかで持っておいてほしいという願いも込めて、このページを作りました。

――逆に「たくさんお金を稼ぎたいから、この仕事がしたい」という切り口で職業を選ぶのも悪くないですもんね。

石田:実は、社内でもこれを読んだ大人のほうが「なんかこっちの道もいいんじゃない?」なんて、改めて自分の新しい選択肢を見つけているケースもあって(笑)。そういう意味では、大人も読んで納得できるところも多い本になったのかなと思います。

“好き”や“得意”は、いつか仕事につながっていく

――本書には先輩の声として、中川大志さんやM!LKのみなさんのインタビューも入っていますね。

石田:みなさん、この本のコンセプトに共感していただいて取材に応じてくださいました。M!LKのみなさんに関しては、本当にお忙しい中、お仕事の合間に「ここなら!」と、お時間を作ってくださって。そのリアルな多忙さにも触れることができました。

吉田:中川さんのインタビューでは、中学1年生のときに『家政婦のミタ』(日本テレビ系)の大ヒットによって電車のなかで人に見られ始めたことに気づき、徐々に「将来もこの仕事をしていくんだろうな」と覚悟を決めていく話がとても興味深かったです。

石田:子どもたちにもわかりやすいようにと言葉を選びながら、キラキラしているばかりではない大変なところも丁寧にお話していただきましたね。

吉田:そのなかで、子どもたちへのメッセージとして「俳優は感情を動かさなきゃいけないおしごとです」「だから、感情が動く瞬間をたくさん経験してほしい」とおっしゃっていたのが印象的でした。

――ほかにも映画監督やゲームクリエイター、アニメーター、編集者など、様々な方にお話を伺っていますが、みなさん子どものころの“好き”や“得意”がつながっているなと感じました。ちなみに、おふたりはどんなお子さんだったのでしょうか?

石田:私も幼いころから絵を描いたり、楽器を演奏したりと、何かを表現することがすごく好きでした。いろんな芸術に触れていく中で、何かを作るっていうのを通じていろんな人に感動や楽しい気持ちを持ってもらえたら嬉しいなという想いから、本を作る人になりたいと思うようになりました。実際に職業として考え始めたのは、中高生くらいだったかなと思います。それこそ、いろいろな進路の本を読んで。

――では、その時の自分が読んでも楽しめるように作られた形でしょうか?

石田:そうですね。あのとき、この本があったらな、なんて思います(笑)。やっぱりエンタメ業界ってちょっと漠然としていたので。

――そういう意味では、ひとつ夢を叶えられたというわけですね。吉田さんは、どのようなお子さんでしたか?

吉田:私ももともと本や雑誌が好きだったので、そうなると“出版かな?”という、やはりフワッとしたイメージでいましたね。でも、私が就職活動をしたのは、いわゆる“就職氷河期”と呼ばれるタイミングで。出版社は非常に狭き門になっていたんです。それでも、ものづくりに携わろうと、まずは広告業界から入って……と、いろいろと遠回りをして今、商業出版の編集者になることができました。でも、実際に働いてみると、いわゆる“遠回り組”で活躍されている編集者が多いんですよね。自分が経験してきたことや、悩みとかコンプレックスから企画が生まれることも多いので、何ひとつ無駄じゃないし、いろいろなことがつながっているんだなって実感しています。

――今回、様々なお仕事を調べたからこそ、改めてエンタメ業界に思うことはありましたか?

石田:改めてエンタメ業界は本当に多くの人によって支えられているんだなって思いました。スポットライトが当たる職業はもちろんですが、見えない舞台裏の仕事がこんなにたくさんあるのかと再認識することができると思います。そのなかで、「ダンスといったらダンサーしかない」と思っていたけれど、実は「振り付けをする人のほうが向いているかも」といった気づきが生まれるかもしれない。そんなふうに未来の可能性を広げていってもらいたいです。そして、やっぱりエンタメって作る側も受け取る側も「楽しむ」ってことが一番大事なんだなと、多くの人に取材をさせていただくなかで感じました。やっぱりお仕事ってうまくいかないこと、辛いこともあると思いますが、好きだからこそそれをも楽しめてしまう。そんな仕事に出会うきっかけに、この本がなってくれたら嬉しいです。

――「エンタメの世界で活躍したい」というと、将来を心配される親御さんも多くいそうですが、こうしたリアルな情報があると応援もしやすいですよね。

吉田:そうですね。私にも、小学1年生の娘がいるんですけど、本当に今から何にでもなれるんですよ。本来なら「楽しそう」とか「やってみたい」という気持ちを素直に応援したいところですが、どうしてもその世界の解像度が低いと心配から色々と言ってしまうと思うんですね。なので、表に立つ仕事のほかにも、こんなにエンタメを支える仕事ってたくさんあるよということを伝えたいですし、親子で読んで「じゃあ、これを今から頑張っていこう」なんて作戦会議もできるんじゃないかなと。そんなふうに子どもたちの未来が楽しみになる材料のひとつとして多くの人に届くといいなと思っています。

■書誌情報
『芸能・アニメ・ゲーム・音楽・マンガ エンタメおしごと図鑑』
編者:エンタメおしごと研究会
価格:1,815円
発売日:2026年4月30日
出版社:サンクチュアリ出版

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