【文芸書ランキング】若林正恭『青天』が首位 2026年に快進撃を見せるお笑い芸人による青春小説
2026年はお笑い芸人が書いた小説が当たった年として記憶されるかもしれない。2026年2月第3週のオリコン文芸書ランキング(※1)を見て感じたことだ。
同週のランキングは前週に引き続き本屋大賞のノミネート作品が全体的には強いという印象だった。前回このコーナーで紹介した佐藤正午の『熟柿』(KADOKAWA)は更に伸びて第7位にランクイン。昨年のミステリ作品における話題作の1つだった森バジルの『探偵小石は恋しない』(小学館)もノミネートを切っ掛けに再びトップテン内へと浮上している。本屋大賞という企画への注目度の大きさとその影響を改めて感じる次第だ。
そうした本屋大賞ノミネートの強さを実感するトップテンではあるが、2月第3週の第1位を飾ったのは若林正恭の『青天』(文藝春秋)である。お笑いコンビ・オードリーの若林は雑誌「ダ・ヴィンチ」でのエッセイ連載をまとめた『社会人大学人見知り学部 卒業見込』(2013年刊、現在は新たなエピソードを追加した完全版が角川文庫より発売中)などの著者があり、「本を書く芸人」として既に認知度は高かった。その若林が初めて刊行した小説が今回の『青天』である。
同作の主人公は総大三高のアメフト部に所属する“アリ”こと中村昴だ。高校アメフトでは弱小校の部類に入る総大三高は、昴の代の引退試合で強豪校の遼西学園に負けてしまう。引退後、勉強も遊びも中途半端で気持ちを持て余す昴が、彷徨いつつ心を燃やせる場所を再び見つけようとする様子が描かれる。スポーツを題材とした、奇を衒わない青春小説である。作者の若林自身も高校時代にアメフト部に所属していたので、そういった自身の経験が反映されている部分はあるのだろう。
お笑い芸人による小説と言えば今年は又吉直樹の『生きとるわ』(文藝春秋)が刊行され、オリコンランキングで上位を占めるなど話題を呼んでいる。以前このコーナーで取り上げた通り、『生きとるわ』は悪友との関係が切り離せない男の姿を描いた、一種の青春小説と呼べる作品だ。『青天』と『生きとるわ』のヒットを見ると、2026年の文芸シーンは「お笑い芸人による青春小説のヒット」がトピックの1つになるだろう。
※1 https://www.oricon.co.jp/rank/oba/w/2026-03-02/
■書誌情報
『青天』
著者:若林正恭
価格:1,980円
発売日:2026年2月20日
出版社:文藝春秋