ウエストランド・井口が明かす、悪口を言い続ける理由「世直し的に言ってるところもありますから」

『悪口を悪く言うな!』(ウエストランド 井口浩之/Gakken)

 ウエストランド・井口浩之による初の単著『悪口を悪く言うな!』(Gakken)が12月18日に発売された。

 井口が独自の目線で世の中について毒づいた一冊。書籍の中は愚痴に溢れているが、今の井口はどのように考えているのか。書籍のことから現在のお笑い界についてなど様々なことを聞いてみた。(まっつ)

相方・河本への怒りは本1冊では足りない?

――初の単著になります。いざ形になってみていかがですか。

井口:今日初めて見たのですが、本当に出るんだなと。今年は共著『書籍!! 今月のお笑い ウエストランド井口と作家飯塚のお笑い界ひねくれ大解説』もあったけど、実は忙しすぎてあまり細かく確認できてないんですよ。それで年に2冊も出せるんだと思いましたね。
※取材は発売日前の12月某日に実施

――スタッフの方のご協力が大きかったのですね。

井口:今まで喋ったのをまとめてくれて、皆さんを信じて僕は「それでいいです」しか言ってないですから。よく言えば「信じました」ですが、悪く言えばめんどくさくて何もやってない。

――中身を読んでみて井口さんとして満足できる出来でしたか。

井口:まあまあまあ……それはね。これからみんなと一緒に読んでいこうとは思っていますんで(笑)。何年も前に言っていることから、最近話していることまであるし、本当にひどいのは省いてくれていると思います。

――ちなみに相方の河本さんからはなにかありましたか。

ウエストランド・井口浩之

井口:いや、そんなんあるわけないでしょ! そんなコンビこの世に一人もいないから。

――著書の中には河本さんに向けての怒りはあまりなかったと思いますが、最近はどうなんでしょうか。

井口:それを言い出したら本1冊じゃ収まらないんで。そもそも僕がすごい言ってるイメージ持たれていますけど、実際はそんなに言ってないですよ。世の中のコンビのほうがとんでもなくひどいから。noteに相方の文句つらつら書いているやつのほうがよっぽどひどいし、ちゃんと見てほしいですね。

――著書の中で世の中のいろんなことに愚痴をこぼしていますが、普段から人より苛立つことは多いですか。

井口:そうですね、気になることが多いです。『悪口を悪く言うな!』というタイトルですけど、世直し的に言ってるところもありますから。僕が言い続けて本当に変わったこともあるし、良くなればいいと思って言ってますからね。

――世の中に井口さんの声が届いたんですね。

井口:例えば駅のホームにあるタッチパネル式の自動販売機。買うのも緊張するし、うまく買えなかったら恥ずかしいし、「あなたへのおすすめ」とか勝手に決めんなよ! 「今日の天気:晴れ」とかホームなんだから見りゃわかるじゃないですか。「あれ、なんなんだよ」って言い続けていたら、最近見ないじゃないですか。その甲斐があったというか、新しいものが必ずしもいいとは限らないんで、そういうことは言い続けていますね。

井口から見たお笑い界の変化

――お笑い界ではなにか変化は感じますか。

井口:相変わらずなところもありますけど、今年はお見送り芸人しんいちとか鬼越トマホークとか似たようなやつらの本が出ましたよね。永野さんや(とろサーモン)久保田さんもそうですけど、本当のことを言うという流れはちょっとあるのかもしれないです。

――逆に井口さんが怒らなくなってきたものはありますか。

井口:昔から同じこと言っているので、あんまり変わってないと思いますけどね。ただ、恋愛がどうというのはさすがにどうでもよくなってきました。ある番組で(ドランクドラゴン)鈴木拓さんが「結局イケメンが得をする」と言ってるのを聞いて、「まだそんなこと言うんだ」って(笑)。

終始インタビューには笑顔で答えてくれた。

――恋愛の話は普遍的ですもんね。

井口:みんな好きですよ。最近は恋愛リアリティショーも人気ですけど、もうどうでもいいですね。こういうこと言っていると、「また強がって」と言われるけど、恋愛を一番にしていない人もいるんだって知ってほしいですね。とにかく恋愛がすべてという人が世の中に多すぎる。

――井口さんはそこに重きを置いてこなかったんですね。

井口:今は芸人の高齢化がすごいし、世に出る芸人は30代後半とか40代とかばっかりで、そういう恋愛絡みのことはお笑い界ではどんどん減ってきていて。ギャップみたいなものがあるのかもしれないです。

――井口さんが一番大事にしているものはなんでしょうか。

井口:お笑いというと仕事なんですけど……お笑いですよね。仕事じゃなくてもなんだって面白いほうがいいじゃないですか。ただ、今年はちょっと働きすぎましたね。

――今年は地上波から配信番組まで露出量がすごかったですよね。

井口:ファンの人が調べた情報だと、M-1優勝した翌年(2023年)より今年のほうがテレビに出ているらしくて、もうわけわかんないですよ。この3年はあっという間に過ぎましたね。

近年の多忙ぶりを振り返る。

――ウエストランドさんは若くして売れて「笑っていいとも!」でレギュラーの頃もあり、ずっと第一線ですよね。

井口:事務所入って3年くらいで「いいとも」に出させてもらって、そこから第7世代ブームでなんにも出られなくなってM-1で優勝して。特殊なキャリアではありますよね。いきなりTHE芸能界を経験して通用しなくて、生活変わらなかったりも経験したので、M-1優勝する頃にはよく言えば達観していましたし、悪く言えばめちゃくちゃ冷めていました。でも、結果としてうまくいっていると思います。人生変えてやるってやつより達観している人がチャンピオンになっている気もするし、ちょうどよかったですね。

――今年は冠番組の活躍もありましたが、「NHK新人お笑い大賞」で審査員を務めるなど仕事の幅も広がっています。

井口:そうですね。今年はM-1敗者復活の審査員もやらせてもらいますけど、その一方で狭い部屋に閉じ込められて2日間くらい監禁されたりもしてる(※「大脱出3」)。いないでしょこんなやつ。で、悪口も言って噛みついたりして、幅広くやりすぎてどういう人間なんだと。

ウエストランドのM-1優勝はさや香が失速した年ではない

――来年の仕事はどうしていくかと考えたりしますか。

井口:そういう指針も特にないというか、基本的にはなんでもいいんですよ。当たり前のように仕事して当たり前のように帰るってことを心がけてるだけですから。嫌な仕事がそんなにないから、休めないってのもあるかもしれないですね。もちろん、「大脱出」をぜひやりたいということはないですけど、急に連れていかれるのでしょうがないです。だから、忙しいストレスはあっても、仕事のストレスは全然なくて。結局、芸人仲間とワイワイしているときが一番楽しいですよ。

――M-1決勝も近いですが、井口さんはお笑いをまっすぐ語るということに興味はないんですか。

井口:いや、言っているんですけど、誰も聞いてくれないんで。僕らが優勝した年を「さや香が“見せ算”やって失速した年でしょ」って勘違いしている人多いけど、それ僕らの年じゃないから! 2022年は誰も失速せず僕らが優勝して、審査員7人中6票取った伝説の年だから。それが伝わってないし、みんなの記憶が改ざんされてるんですよ。

思い込みで語られることも多いそう。

――モグライダーの芝さんや見取り図の盛山さんがエッセイを出していたり、井口さんがどう“書くか”注目している人も多いかと思います。

井口:noteもたまに書いたりしますし、当然ネタも書いているので、そんな嫌って感じはないですね。いつかは小説とか挑戦してみたくなるかもしれないですね。

――他の方の文章を読んでみて思うことはありますか。

井口:文章気取っているやつありますよね。急にエッセイで気取るやつ、あれは避けたい。僕も書いているときは気取りがちなので、気取らないようにしたいですね。

――今回の書籍に関してはどんな読み方をしてもらえると嬉しいでしょうか。

井口:どんな読み方でもいいですよ。強いていうなら、今って啓発本やビジネス本とか身になるものを読もうという人が多いと思いますけど、たまには身にならないのを息抜きとして読んでほしいですね。どれか1個くらいは自分に刺さるものがあるかもしれないんで。

――たしかに無駄こそ大事ですよね。

井口:意味なかったなと思ったときに、「そんくらいでいいのか」と思ってくれるかもしれない。ここに書いてあることなんて本当にどうでもいいじゃないですか。気楽に読んでほしいです。あと、マジレスするのだけはやめてください。

■書誌情報
ウエストランド 井口浩之『悪口を悪く言うな!』
価格:1,650円(税込)
発売日:2025年12月16日
出版社:Gakken

ウエストランド・井口浩之

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