『ばけばけ』高石あかり、1年9ヶ月前の初写真集が重版決定 写真集でもみせていた高い表現力

 NHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』でヒロイン役に抜擢され、放送前から「演技力が群を抜いている」と話題を集めている高石あかり。『ばけばけ』をきっかけに検索数が急上昇し、過去の出演作やパフォーマンスが次々と再評価される中、1年9ヶ月前に発売された初写真集『幻灯』が重版を果たした。俳優としての“飛躍前夜”を捉えた一冊がいま大きく注目を集めている。

 高石は映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』、松本穂香と共演した『セフレの品格 決意』、青春映画『Single8』、そして大ヒット作『わたしの幸せな結婚』などで存在感を発揮。2023年11月には第15回TAMA映画賞にて最優秀新進女優賞を受賞し、いま最も勢いのある若手俳優の一人と評される存在だ。その魅力が“写真”という形で早くから結晶化していたのが、この『幻灯』である。

■朝ドラ決定で一気に広がる再評価の波

 写真集の重版が話題になった最大の理由は、朝ドラヒロイン決定によって高石の表現力が一気に“国民的な関心事”となったことだ。朝ドラのヒロインといえば、今後10年の活躍を予感させる若手女優の登竜門。“演技の確かさ”が最も評価される枠であり、キャスティングは毎年大きな注目を浴びる。そんな中で高石が抜擢されたことは、映画ファンやドラマ関係者の間では「実力が認められた」と受け止められ、彼女の過去作、そして写真集が一斉に掘り起こされるきっかけとなった。

 通常、写真集の重版は発売直後に集中するものだが、『幻灯』の場合は逆。“俳優としての躍進が起きたあとに、作品価値が上昇し重版に至った”というレアケースである。

 写真集『幻灯』は、台湾南部の台南・高雄でロケを実施。高石にとって初の海外であり、その新鮮な体験が“表情の変化”に自然な奥行きを与えている。かき氷を食べる素朴な笑顔、夜市での自由で無邪気な眼差しなど、これらは単なるバリエーションではなく、ひとつひとつのカットに“俳優としての呼吸”が宿っている。朝ドラのキャスティング担当者が、こうした“表情の引き出しの多さ”に注目したとしても不思議ではない。

 タイトルの「幻灯(げんとう)」は、古いスライド映写技法のこと。光に照らされ、一枚一枚のフィルムが“物語の断片”として浮かび上がる。このコンセプトは、高石あかりという俳優の核心にも通じている。映画やドラマでは役を生きるが、写真集では役がない。代わりに、“高石自身に宿るさまざまな感情や質感が、そのままスクリーンに立ち上がる”という稀有なプロセスが起きている。透明感、強さ、戸惑い、無邪気さ、影の気配。その複雑なニュアンスが静かに重なっているからこそ、朝ドラヒロインという“国民的役柄”に求められる多面的な魅力を、写真集が前もって示していたとも言える。

 ここ1〜2年で、高石はキャリアの転換期ともいえる作品に次々出演した。さらに、TAMA映画賞での受賞により「実力派若手」のイメージが確固とした。この流れの中で、写真集を見るとSNSでは「初期のあかりさん、もう表現者として完成していたのでは?」「今見ると写真の奥に“俳優の素地”が見える」といった声が相次いでいる。

 写真集出版から約2年後の重版は、近年でも珍しい現象だ。だが、朝ドラヒロインとして国民的注目が集まる“タイミング”と、写真集が持つ“表現者としての深度”が一致したときにこそ、読者は手を伸ばす。この重版は、「写真集『幻灯』は、高石あかりの演技者としての根源をとらえた記録である」という評価が静かに浸透した証拠だろう。

 いま高石あかりの“現在”を知るために、そして彼女がどのようにしてこの表現力に辿り着いたのかを知るために、『幻灯』はもはや欠かせない一冊となった。

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