【トップ対談連載】LINEマンガ・髙橋将峰 × アミューズメントメディア総合学院・吉田東吾 オーディション共催で見据える未来像
老いた殺し屋が凄惨な最期を迎えるも、なぜか死なずに若返り。蘇った身体とスキルを使い、復讐をはじめる――。「LINEマンガ」から生まれたオリジナルwebtoon『コードネーム:バッドロー』が話題だ。
この人気作を題材に声優を育成する学校の学生たちがアフレコ動画をTikTokに投稿し、優秀作を決めるコンテストが開催されている。「LINEマンガ」と30年以上にわたりエンタメ業界に優秀な人材を輩出してきたアミューズメントメディア総合学院(AMG)のコラボによる「声優発掘オーディション」だ。
LINEマンガ&AMGの声優オーディション開催 河西健吾、赤羽根健治とともに声優を目指そう
「LINEマンガ」とアミューズメントメディア総合学院のコラボ企画『第2回 LINEマンガ&AMGチーム対抗!声優発掘アフ…今回は2回目の開催。第1回にはアフレコ投稿が殺到して総再生回数は約560万にも伸びた。またグランプリを受賞した2人は卒業後、プロとして活躍しはじめている。さらに、この新たな声優を生み出すプラットフォームに、両社は「それ以上の期待」も寄せているという。
いったい、どんな未来像を思い描いているのか? AMG理事長の吉田東吾氏と、LINE Digital Frontier代表取締役社長CEO・髙橋将峰氏に迫った。
■アフレコなのに、踊りだす生徒も
――TikTokで「#バッドローチャレンジ」「#lineマンガamgオーディション」などをみると、webtoon『コードネーム:バッドロー』のいち場面でアフレコしている投稿者が続々見つかります。また、みなさん、うまいですよね。
#lineマンガamgオーディション
髙橋:そうなんです。TikTok上で行っている今回のオーディションは、アミューズメントメディア総合学院(AMG)の学生さん限定で実施したもの。投稿者はまだプロじゃないのに、みなさん完成度が高くて、僕も驚きました。“見せ方”もうまいんですよね。アフレコ企画なのに、意気込み動画ではいきなり踊りだす方がいたりする(笑)。みんな自分の個性を出しながらアピールしているのが、とてもいま風だなと。
吉田:そうですね。いまは声優の世界はただ裏で声をあてるだけでなく、表に出る機会も増えていますからね。セルフプロモーションも求められる時代なので、今回はその練習にもなる、とてもいい機会をいただきました。
――あらためて、そんな両社のコラボ「声優発掘アフレコオーディション」がスタートした経緯から教えてもらえますか?
髙橋:もともと我々「LINEマンガ」は、webtoonをはじめ多くのマンガ作品を提供しているプラットフォームです。オリジナル・独占作品はおよそ700作品が連載中ですが、まだまだ新参者。一方ですでにアニメ化され映画化もした『先輩はおとこのこ』やアニメ化が決定している『入学傭兵』など、IPとして人気の作品が増えていくのは間違いありません。
つまり今後、活躍する声優さんを陰ながらバックアップすることは、「LINEマンガ」の成長を後押しすることにもなる。ぜひ一緒に成長していきたいと考えました。そこで昨年、「声優のタマゴを育てられている教育機関とコラボして、一緒になにかできないか」とまず動き始めたのです。
余談ですが、僕らも「LINEマンガ インディーズ」というアマチュア作家さんもマンガを投稿でき、プロへの道につながるようにとつくっているプラットフォームがある。声優さんにおいても、これと似たことができないかと考えた部分もあります。
吉田:その話を耳にして、すぐに手を挙げさせてもらいました。 私たちAMGは1993年の創立から、今年で32年目を迎える教育機関です。 声優、CG、アニメ、イラストなどエンタメ業界で活躍する人材を育成してきました。 中でも「声優」は多くの著名なプロを輩出してきた実績があります。そして、現役のプロが講師を務めていることがAMGの特徴の一つでもあり、「産学共同・現場実践教育」という教育理念を基に、プロの現場でプロに学べる環境を提供してきました。
――『おいしい給食』など、AMGが企画・制作などを手掛ける映画・テレビなどもありますしね。
吉田:そうですね。本学院では、AMGエンタテインメントをはじめとしたエンタメのコンテンツを制作する事業部が、「産学共同」プロジェクトとして学生たちに多くのチャンスを提供しています。合わせて、外部のパートナー企業様とも様々な取り組みをさせていただいております。その中で、今回の試みは、学生たちがwebtoonの一場面にアフレコをあて、TikTokで配信。「いいね」などの数を指標にオーディションを行い、グランプリとLINEマンガ賞の受賞者には「LINEマンガ」の広告動画への出演権が贈られます。声優を目指す学生たちへのチャンスの提供は、本校の理念に繋がる素晴らしいアイデアだと思います。
――そして昨年、第一回目のオーディションを『作戦名は純情』という作品を題材に実施。約1500件の動画が投稿されて、約60万回再生される動画もあったそうですね。
LINEマンガとAMGが企画! 声優・速水奨の演技指導も「次世代声優発掘レッスン&アフレコオーディション」レポ&結果発表
■LINEマンガが次世代の声優を発掘 10月30日、国内最大の電子コミックサービスのLINEマンガとアミュー…髙橋:動画の総再生数は560万回ほどを成し遂げました。実は『作戦名は純情』というwebtoon作品は、もともとTikTokなどのSNSで盛り上がったことがきっかけで人気が急上昇した作品でした。これはアフレコオーディション企画にも親和性があるだろうと、第一回目の題材に決めたのです。そして、フタを開けたら想像以上でした。あらためて縦読みでフルカラーのwebtoonが、アフレコ企画と相性がいいこと。そしてスマホやTikTokなどの投稿になれた若い世代の発想と発信力が高いことを目の当たりにしました。
吉田:おかげさまで、本学院としても本当にすばらしい機会になりました。オーディションに参加した学生たちは、普段、アフレコの勉強はしていますが、先生やクラスメイトだけでなく、SNSを通して多くの方々に見られ評価されたことは、学生たちにとって貴重な経験であったと思います。
もちろん、ネガティブな声にさらされるリスクもありますが、プロの世界はそうした厳しいものですからね。実際、オーディション参加の前と後で、学ぶ姿勢や普段のSNSの積極的な活用まで「良い方向へと変わる学生」が多くいます。
髙橋:それはうれしいですね。
吉田:オーディションに参加してからSNSで人気が出て、そのノウハウを活かして学生広報の役割を担うようになった学生もいるほどです。また、グランプリを受賞した2名は、声優事務所からもお声がけいただきました。
髙橋:第2回目となる今回も、そうした成長の道になるようなきっかけになれば幸いです。ここからスターが生まれて「実はきっかけはLINEマンガのオーディションで……」という方々が増えたら最高ですね。また、このオーディションをきっかけに、僕らのコラボレーションがもっと大きな可能性があることに気づき、より期待しはじめています。
■声優が活躍できる新たなフィールドを創造
――大きな可能性というのは?
髙橋:オーディションでボイスをつける動画は、webtoonのコマそのままではなくアニメのような動きを取り入れたものにしています。ショート動画ではあるのですが、そこに声が入るだけで、本当に臨場感が出る。だから、皆さんの投稿も、受賞者が実際に出演した広告動画もとても質が高いのです。アニメでもマンガでもない場所で、アフレコによってコンテンツがリッチになる。その可能性を垣間見ている気がします。
つまり音や声をうまくいれた、webtoonの新しい形、市場がありえるのではないか、と思い始めています。いわば、それは声優さんが活躍する新しいフィールドが増えることでもありますよね。
吉田:おっしゃる通りですね。今回のようなSNS広告のボイスや、webtoonのアフレコの収録など、声優が活躍できるフィールドが増えれば、それだけプロの声優になれるチャンスが増えます。それは我々にとっても大歓迎ですし、ぜひ盛り上げていきたいところです。また、先ほどの髙橋さんのお話の中にあった“700作品が連載中”という情報からも「LINEマンガ」の大きな可能性を感じますよね。圧倒的なコンテンツ量ですから。
髙橋:そうですね。マンガの週刊誌は載せられても20作品ほどが限界です。しかし、ひとつのプラットフォームで、現状では700作品も連載されている。すさまじい量のマンガコンテンツが創られています。そしてこうしたマンガやwebtoonが原作となって、TVアニメや映画などになっていく。Netflix をはじめとしたグローバルな配信サービスもアニメコンテンツをなんとか増やしたい意欲が高いようですしね。
吉田:そうなんです。ただ一方で、アニメを制作するのは本当に大変で、いまは制作現場の人手不足が問題になっています。その意味で、webtoonのようなアニメとはまた違う、ユニークなコンテンツが別のかたちでリッチ化してくのは、思っている以上に価値が高まるかもしれません。いずれにしても、新たな才能の発掘はこれまで以上に求められるでしょうね。
――その意味では、新たなAMGと「LINEマンガ」のコラボ企画として実施している「二次創作イラストコンテスト」にも期待ですね。
LINEマンガとAMGのコラボ企画「推しを見つけ出せ!バッドローファンアートバトル」開催
LINEマンガとAMGが共催する二次創作イラストコンテスト「バッドローファンアートバトル」が開催。学生が推しキャラを描き競う。吉田:そうですね。こちらはイラスト分野の学科の学生を対象に『コードネーム:バッドロー』の推しキャラクターを描いたイラストをXに投稿してもらい、優秀作を選ぶコンテストを実施しています。優秀なイラストレーターに育っていく機会になればと期待していますし、さらに次はCG分野の学生がCG動画を創作するようなコラボをしたいなと勝手に妄想をひろげています(笑)。
髙橋:ぜひ。御校と一緒に原作、CGアニメ、アフレコまで、すべて制作までできたら最高ですね。
吉田:本学院にはエンタメ業界を目指す複数の学科がありますので、学科を横断できる企画が貴社と実現できたら本当に最高ですね。今後も日本のみならず、世界に向けてエンタメを発信し続けていきましょう。