日本代表のブラジル撃破に『キャプテン翼』ファンが大歓喜! 作中で描かれ続けた「サッカー王国」のイメージ
サッカー日本代表がついに歴史を塗り替えた。10月14日、これまで13戦勝利なし(2分11敗)だったブラジル代表を相手に前半で2点を許す苦しい展開ながら、後半に怒とうの3得点で大逆転。国際親善試合だったとはいえ、14度目の対戦で初めて打ち破った記念すべき瞬間である。
この劇的な勝利は、単なるサッカーの結果を超えて、『キャプテン翼』ファンにとって、ある種の“リアル化された夢”の実現だった。
高橋陽一によるサッカー漫画の金字塔『キャプテン翼』は1981年に「週刊少年ジャンプ」で連載がスタート。作品はその後も『キャプテン翼 ワールドユース編』『ROAD TO 2002』『GOLDEN-23』などの続編を経て、オリンピックを舞台としたシリーズ『キャプテン翼ライジングサン』が2024年まで描かれた。現在はwebサイト「キャプテン翼WORLD」にて『キャプテン翼ライジングサンFINALS』がネーム形式で連載中だ。
連載開始時、子どもたちがするスポーツは野球が主流。まだ日本にプロリーグはなく、ワールドカップ(W杯)出場も果たしていない時代である。一方で、サッカーの頂点に立つ国として世界中が認めていたのがペレ、ジーコらスター選手を生み出したブラジルだった。そのブラジルでは「サッカーが下手な人=日本人」というスラングがあったほど、日本は弱小国として見られていたのだ。
そんな時代にサッカーで世界一を目指す少年・大空翼を主人公に据えた物語は、極めて革新的だった。
翼のサッカー観を形づくった師匠・ロベルト本郷は元ブラジル代表選手で、必然、翼も小学生の頃から「サッカー王国ブラジル」に憧れを抱く。全国大会での優勝後、ロベルトと一緒にブラジルへ行くと約束するも、ロベルトは翼を残して一人で帰国。中学に進学した翼はそれでもブラジル行きの夢はあきらめず、ロベルトが残した「ノート」でブラジル式サッカーを独学で身に着け、全国大会3連覇を成し遂げる。そして卒業後、単身ブラジルへ渡り、現地のクラブでプロ契約を果たした。
シリーズを通じて、ブラジルは常に「最強の象徴」として描かれてきた。翼の最大のライバルとなるのも、「サッカーサイボーグ」カルロス・サンターナと「若きサッカー王」ナトゥレーザという2人の天才だった。そして、他ならぬロベルトは『ワールドユース編』では監督、『ライジングサン』ではコーチとしてブラジルを率いて翼の前に立ちはだかる。
実際のサッカー選手たちの多くが『キャプテン翼』に影響を受けたと語っており、日本サッカー界の歴史は40年以上にわたり描かれた『キャプテン翼』の世界をベンチマークに成長を遂げてきたとも言えるのだ。
試合後、ネット上では『キャプテン翼』読者たちから「今夜は”いつかの大空翼”たち全員の勝利なんだなと思いたい」「キャプ翼世代だとやっぱブラジルは別格なのよ」「たぶん若い人よりもブラジルにサッカーで勝つって衝撃デカいね」「キャプ翼より先に日本がW杯で優勝する日が来るのも決して夢ではない」といった声が続出したほか、一部中国メディアも「『キャプテン翼』の夢は徐々に現実となりつつある」と報じていた。
この勝利がすぐに「世界トップ常連国との互角の地位」を意味するわけではない。それでも2026年W杯に向け、翼が物語の中で夢見た「ブラジルを倒して世界の頂点に立つ日本」が空想ではなくなったことを示し、選手、サポーター、そして「キャプ翼読者」に大きな自信を与えた一勝となったのは間違いないだろう。