『ジークアクス』なぜ大ヒットに? ガンダム好きライターが全話観て感じた、3つのポイント

過去作からの引用が生んだ好循環

 もうひとつ、ガンダムシリーズという巨大コンテンツの延命にも『GQuuuuuuX』は寄与したはずである。「過去作からの引用が大量に散りばめられた、話題性抜群のライド系アトラクション」である『GQuuuuuuX』は、主にSNSを通じて広く視聴者を集客することに成功した。その結果、作中の専門用語やキャラクターに関する情報を求めて、若年の視聴者やガンダムに馴染みのなかった視聴者も『機動戦士ガンダム』をはじめとする過去作にたどり着く。「初見の感想」がSNSで共有されれば古参ファンから反応があり、それらがSNS上で循環することでさらに話題が拡散される。

 近年、これほどまでに『機動戦士ガンダム』が話題になることは、ついぞなかったように思う。名作とはいえ、45年以上前のアニメ作品だ。視聴に関するハードルを飛び越えさせるには強い動機がいる。アニメ本編のスピード感と話題性、そしてインターネットとSNSの存在が前提となった視聴環境は、視聴のための動機を提供しハードルを著しく下げた。その結果過去作にも新たな視聴者が生まれる好循環が発生したのである。正確な数字はわからないが、『GQuuuuuuX』のおかげで『機動戦士ガンダム』というコンテンツの寿命は大きく伸びたのではないだろうか。

 単に面白いストーリーを語るだけではなく、ハイスピードな語り口によって視聴者を振り回し、考察や大喜利、過去作への目配せによってネット上の話題を独占するという複合的なヒットとなった『GQuuuuuuX』。そもそもガンダムという知名度のあるIPだったからこそ可能になった手法ではあるが、今後のアニメをヒットさせる方法としてひとつの典型例となりそうだ。現代のアニメ視聴環境の複雑さ、そして全ての要因がうまく噛み合って好循環に入った場合の効果の巨大さを示す作品として、『GQuuuuuuX』は語り継がれていくだろう

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