『アオアシ』10年の連載に幕引きーー人が学び、育つことの尊さを感じさせてくれた物語を振り返る
考える葦たちが私たちに残してくれたもの
プロという狭き門を潜り抜ける為に、葦人を始めJリーグユースに所属する選手たちは努力を重ねながら懸命に日々を生きていた。
葦人たちだけではなく、初期から葦人の心の支えとなっていた一条花や、女手ひとつで葦人を育て東京へ送り出した母親。葦人たちユースの面々を見守るコーチ陣。Jリーグの下部組織であるユースチームへの対抗心を燃やしながらエスペリオンユースに立ち向かう高校の強豪校たち。そしてスペインの名門、バルセロナユースの面々。さらには夢半ばで破れ新たな道に進む者も。作中に登場するキャラクターそれぞれが考え、あがき、懸命に生きる姿。そこには確かな人間の手触りがあった。
作中で花が「人間は考える葦である」という、哲学者・パスカルの有名な言葉を引用したセリフを葦人に告げるシーンがある。人間1人1人は弱い存在だが、考えることこそが偉大な力になる、という意味だ。
葦人は課題に直面しながらも、考えに考え抜き、自分で答えを掴んだ。自分で掴んだ答えは、一生忘れない。人が学び、育つことの尊さを感じさせてくれた10年だった。
最終話が掲載された「ビッグコミックスピリッツ」誌上では、浦沢直樹、あさのいにお、ジョージ朝倉をはじめ、豪華な面々による完結お祝いイラストも公開されている。
2026年にはTVアニメ第2期の放送も予定されているほか、さらには葦人の地元、愛媛県のJリーグチーム「愛媛FC」の2025年8月31日ホームゲームにて「アオアシ サンクスマッチ」が開催されることも決定している。
誌面という枠を超えて、ファンを楽しませてくれた「アオアシ」。連載が完結してしまった寂しさは勿論ある。作者の小林有吾は物語を終え、読者へのメッセージに「ここから先の葦人たちの話は、みなさんが思い描いてみて下さい」と綴っている。
作品を愛した人の数だけ物語は広がっている。若く、希望に溢れた世代はこれから何にだってなれる。大きな希望と、未来への夢を見せ続けてくれた『アオアシ』。10年間の軌跡に、改めて感謝の言葉を伝えたい。