加藤シゲアキの苦悩と覚悟 今村翔吾&小川哲『ボクらの時代』で語ったアイドルと作家の両軸
小川哲「直木賞を獲らないと作家としてスタートしない世代」
そうした本音を前に、小川も「直木賞を獲らないと作家としてスタートしない世代」という時代の変化に対する覚悟を見せる。それは、いつか必ず直木賞を獲らなければと切望する加藤の心境を組みつつ、自分自身を鼓舞するかのようだった。そして今村も「チャレンジして倒れる屍が必要」だとして、これからの40代を巨匠と呼ばれる先人たちを超えるべく、あえてテーマを当てていくビジョンを語る。
この3人といえば、今年1月には能登半島復興応援チャリティ短編集『あえのがたり』の発起人となったことでも話題になったばかり。まだまだ自身のキャリアを築き上げていくんだという意気込みと、これまで積み上げてきたものを手に「何かできないか」と使命感に駆られる年頃でもある。「今度、麻雀でもしながら」なんてほのぼのと話しているように見えても、ギラギラとした熱を隠しきれない。脂の乗った3人のこれからが、ますます楽しみになった。
そして今回の鼎談を楽しみながら、かつて加藤がMCを務め、小説家たちをゲストに招いたトークバラエティ番組『タイプライターズ〜物書きの世界〜』(フジテレビ系)が懐かしくなった。芸能と文芸の境界線をシームレスにつなぎ、小説家たちの本音を引き出していく。そして、誰よりも「作家」の肩書きにふさわしい自分でいようと奮闘し続ける。そんな作家・加藤シゲアキだからこそ紡ぐことのできる魅惑の世界を味わえる機会が、また設けられることを待ち望んでいる。