OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』
オカモトショウ、宗教ビジネスを描く漫画『るなしい』に感じた人間の業 「リアルなんだけど、一線を越えた先も描いている」
主人公・るなから見た"神様"は
――3巻からは10年経ち27-8歳になったるな、スバル、ケンショーが描かれます。新規顧客が取れなくて苦労している証券会社の女性が登場しますが、るなとのやり取りをきっかけに仕事が上手くいくようになる。もちろんグラデーションはありますが、証券ビジネスと信者ビジネスはどう違うんだろう?と考えてしまいました。
根本は一緒かもしれないですね。るなは鍼灸師の資格を持っているし、身体の悪いところを治すことがビジネスの基本なわけで。ヘンな話、風邪をひいたときに、耳鼻科で薬をもらうのと一緒なんですよ。証券も商品説明を受けて「これだけ儲かる」ということを信じてお金を払うわけじゃないですか。資本主義のメジャーでやっているか、そこから外れているかの違いであって、仕組み自体はかなり似ている気がします。
大人になったケンショーもすごくて、お年寄りを相手にしたビジネスをやってるんですよ。最初は話し相手なんだけど、「いい投資がある」ってお金を集めて。でもお年寄りはケンショーを信頼しきっているし、ケンショーは「歌うところが見たい」って言われてコンサートまで開くんですよ(笑)。「恥ずかしいよ」とか言ってるんだけど、おばあちゃんたちにキャーキャー言われて。あれはもう推し活ですよね。その人を応援したい、見たい、会いたいからお金を払うっていう。
――確かにアイドルの推し活と何が違うのか?と言われたら……。
わかんないですよね。何が健全で何が不健全なのかも簡単に言えなくなってくるんですよ、『るなしい』を読んでると。人が生きていくには衣食住だけではダメで、何かしらの希望や夢が必要あんですよね。「これがあるから明るい未来を想像できる」というものがないと生きていけないから、人は何かに頼るのかもしれないなと。
――なるほど。るなの名言も『るなしい』の面白さだと思います。「私の印象じゃ神様って、もっとヤクザだけどね」とか。
神様は優しいと思っている信者の人と話をした後の、スバルとのやり取りですよね。スバルが「温厚で平和的で、無条件で人間みんなの幸せを願ってるような、そんな存在?」と言うと、るなが「神様って、もっとヤクザだけどね」って答える。このセリフも「なるほどな」と思いました。たとえば神社で初詣にいくと、なんとなく「自分をいい方に向けてくれるといいな」ってお願いするけど、神様ってもっとエグくて。自然に近いわけじゃないですか、たぶん。
――恵みも与えてくれるけど、災害でもあるというか。『るなしい』はもうすぐ完結。じつは1巻の冒頭で収監されているるなが描かれているので、何かしらの理由で捕まるんだろうなと思いつつも、先の展開が楽しみです。
まずは、るなとケンショーのマウントの取り合いがどうなるか、ですよね。るなは新興宗教の家に生まれて、ケンショーは貧困育ち。どちらもビジネスの才能はあるんだけど、食って食われてを繰り返す感じがウロボロスみたいだなと。あとはスバルがどうなるか。「僕は普通なんで」みたいな感じだし、いちばん読者の目線に近いキャラクターなんですけど、じつはいちばんエグイのはスバルなんじゃないかなと。高校の頃からるなを好きだし、何かやりそうな気がしてます。
――ケンショーが経済的に貧しい家で、スバルはそれなりに裕福という対比もポイントなのかも。
そうですね。OKAMOTO'Sの「Cheep Hero」がイメージソングになっている映画『悪い夏』(生活保護の不正受給を巡って様々な欲望や愛情が交差するサスペンス映画)も、貧困が一つのテーマになっていて。すごく面白いので、こちらもぜひ観てください。
『るなしい』読みながら聞きたい音楽
『スーサイド』(1977年)/スーサイド
1970年ニューヨークで結成された2人組ロックバンド。映画「シビル・ウォー」で楽曲が使用されたことも話題に。
「70年代後半のニューヨーク・アンダーグランドを代表するバンドですね。俺は『るなしい』にこういうカッコ良さを感じています」
OKAMOTO’S最新情報
OKAMOTO’Sは現在、約8年ぶりとなる47都道府県ツアー「OKAMOTO'S 15th Anniversary FORTY SEVEN LIVE TOUR -RETURNS-」を開催中。4月6日(日)大阪・なんばHatchでファイナルを迎える。
そして、6月15日(日)にはスペシャルファイナルと題し、2016年以来3度目となる日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ「OKAMOTO'S 15th Anniversary FORTY SEVEN LIVE TOUR -SPECIAL FINAL- at 日比谷野外大音楽堂」を開催することが決定。
◼︎OKAMOTO’S公式HP:https://www.okamotos.net/