『キングダム』信『ONE PIECE』ルフィ、強い信念を持つ二人の共通点と違いとは? 3つの軍規違反から考察
黒羊丘の戦い(43巻)
桓騎を総大将とした秦軍と、慶舎率いる趙軍が激戦を繰り広げた黒羊丘の戦いでの一幕。正常な人間ならおよそ思いつくこともない残虐な方法を実行し戦を勝利に導く桓騎とその軍は、元は野盗ということもあり、信が外道と称する陵辱や略奪が当たり前に行われていた。
この戦いでも桓騎は、自軍の力・残虐さを誇示し離眼城の趙軍を撤退させるため、兵に付近の村人の虐殺を指示しており、それを目撃した信が桓騎軍の兵を切りつける。さらには飛信隊の古参である尾平が、虐殺された村人の遺品を略奪していたことが発覚し除隊となるほどに発展した。
これは『ONE PIECE』でいうとメリー号を巡ってウソップが麦わらの一味を抜けるストーリーに重なるといえるだろう。きっかけは全く違うものであるが、船長であるルフィと隊長である信が、怒りに身を任せて望んでもいないことを口にしてしまう点においてもかなり近しい。
また、その後和解したことで組織全体が成長を遂げた構図はかなり一致している。除隊を受けた尾平は信の陰口に対して怒りを見せ、ウソップも同じようにルフィの夢を笑うものに立ち向かう姿が描かれている。
信は、「漂と語り合った天下の大将軍は、汚いことはひとつもしない」と話しており、夢である天下の大将軍の人間性といった具体像まで明確にイメージしていた。ルフィも、「支配なんかしねえよ。この海で一番自由なやつが海賊王だ」と話していることから、夢を実現させるために最善を尽くせる二人はとてもよく似ている。
しかし、この一幕は和解の仕方がそれぞれ違う。ルフィは泣き崩れながら友達同士のように和解したのに対し、信は静かに思いを語り、相手の反省も受け取った上で和解する、上司のような対応を見せたのだ。長く隊長として活躍してきた信のマネジメント力の成長を感じられる。
信とルフィは性格的に似ている部分もあるが、天下一の大軍を率いることを望むものと、圧倒的な自由を望むという目的の違いから、徐々に違いが見られるようになった。二人の夢が叶った時には、どれほどの違いが生まれているのか。はたまた、さらに似通ってくるのか、今後の二人の成長が楽しみだ。