話題作『花は咲く、修羅の如く』アニメ第1話を原作と比較 漫画に登場しなかった“桜”が表す心情

 そんな色鮮やかなAパートから一転し、Bパートでは落ちついたトーンの画面が多くを占めるようになる。自分が部活に入れない原因であるフェリーの最終便(17時!)に乗って島に帰るシーンはピンクがかった夕焼けの色がアンニュイな花奈にマッチ。また船に同乗していた瑞希が家に泊まることになり、同じ部屋で寝るシーンではカーテンから漏れる月明かりがふたりを隔てて現在の立場の違いを表す。これらもモノクロの原作にはない、カラーのアニメだからこその表現だろう。

 その後、早朝の海岸における花奈の『春と修羅』朗読や帰宅時間の問題の解決を経て、彼女は晴れて放送部に入部することを決意。ここで雨雲から光が指し彼女の顔を照らすどストレートな演出は、第1話のクライマックスにふさわさしい(文字通りの)晴れやかさだ。

 原作ではここで第1話が終了するが、アニメではオリジナルシーンを追加。放送部のオリエンテーションに向かった花奈が、同じ部活で切磋琢磨することになる面々と初めて顔を合わせる。そんなこれからの波乱を予感させるシーンののち、Bパートでは初登場となる桜の花びらが上空に舞ってアニメ第1話は締めくくられた。

 ここまではおもに映像面の演出に触れたが、アニメ化にあたっての追加要素という点では声優陣による朗読にも触れる必要がある。特に花奈による『春と修羅』は鬼気迫るものがあり、瑞希ならずとも彼女の(そして新進気鋭の声優である藤寺美徳の)才能に強烈に惹きつけられるはず。また、先に挙げた冒頭の画面内の少女による『春と修羅』との比較も面白いだろう。水(瑞希)によって機会を与えられ、鮮やかに咲こうとする花(花奈)の成長がどのように描かれ、そしてどう語られていくのか注目したい。

■放送情報
TVアニメ『花は咲く、修羅の如く』
日本テレビ・BS日テレほかにて放送中
原作:武田綾乃・むっしゅ(集英社『ウルトラジャンプ』連載)
監督:宇和野歩
シリーズ構成:筆安一幸
キャラクターデザイン:相音光
総作画監督:相音光・嶋田聡史
美術監督:山口忍・白井加奈子
色彩設計:中野尚美
プロップデザイン:反田誠二
撮影監督:棚田耕平
編集:齋藤朱里
音響監督:濱野高年
音楽:横山克
アニメーション制作:スタジオバインド
オープニング主題歌:SHISHAMO「自分革命」
エンディング主題歌:さとう。「朗朗」
©武田綾乃・むっしゅ/集英社・すももが丘高校放送部
公式サイト:https://hanashura-anime.com/
公式X(旧Twitter):@hanashura_PR

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