『べらぼう』注目度が高い理由とは? 『光る君へ』に続く、大河ドラマの“新潮流”を読み解く
現代の推し活にも通ずるメンタリティ
時代劇を通じて、いわゆるお勉強としての歴史の理解を促すこと以上に、あるいはそこに喜怒哀楽をはじめとする人間ドラマとしての普遍性を見出すこと以上に、その文化をめぐる人々の営みの中にこそ、今を生きる我々にも通じる共時性があるのではないかと考えること。そのようなアプローチは、実は前作『光る君へ』の随所にも見受けられたことだった。あの作品は、「人はなぜ物語を書くのか」「なぜ物語を読みたいと思うのか」といった根源的なテーマはもとより、物語という創作物を通じて、身分や出自を超えた人々が繋がり合うことを描いた作品でもあったのだ。
同じ作品やキャラクターを愛する人々が、自身の思いや解釈を語り合うことの楽しさ。あるいは、そのつづきを心待ちにする喜びや、その創作を支援したいと思う心持ち。ある意味、現代の推し活にも通ずるような人々のメンタリティの萌芽を描くことも、『光る君へ』は射程していたのだ。そのような、ある意味大河ドラマの新潮流とも言えるアプローチを、事前段階から前面に打ち出したことが、今回の大河ドラマ『べらぼう』の高い注目度の理由なのではないだろうか。とはいえ、蔦重の冒険は、まだまだ始まったばかりだ。その高い注目度に違わぬ作品となることを期待しながら、これからの一年を、じっくり楽しみたいと思う。