【漫画】神様、人間界でなぜ弁当屋に? 不思議な世界と和食の意外性にハマるSNS漫画『邪神の弁当屋さん』


――1話目に6.1万のいいねが集まっていますが、ご自身としてはいかがでしょう?

イシコ:正直ここまで拡散してもらえるとは思いませんでした。面白さよりも登場人物の誠実さに全振りしたので、そこがよかったのかなと思っています。絵としても物珍しさがあったのかもしれません。

――なぜ弁当をモチーフに?

イシコ:もともと弁当を詰めるショート動画が大好きで、弁当の物語性はモチーフにしやすいと考えていました。自分のためだったり家族のためだったり、弁当箱がひとつ増えたり逆に減ったり、詰め方も人によってクセがあるので見ていてワクワクしますね。あとは日本らしいものをネタにしたかったのと、人外が描きたかったのもあります。

――西洋風な物語のなかで登場する弁当が「せせりの揚げ物」「日の丸弁当」「玉子焼き」など和風なのが対照的でした。

イシコ:北の国は国外から色んな商人が出入りしていて、マニアックな食材や調味料がけっこう流通しているイメージです。レイニーは別の国でダリアの祖母から料理を教わったため、和食っぽいものを中心に作ります。とは言いつつ、出てくる料理のほとんどは私自身の好みがかなり反映されています。甘めの玉子焼きとか。

――物語を考えるに当たってのコンセプト、苦労した点などがあれば教えてください。

イシコ:メッセージ性を持ちながらも説教臭くならないようなセリフを作るのに苦労しています。明確なテーマを持って描いていないので何を感じるかは読む人に委ねたいのですが、委ねすぎてもいけないのでバランスが難しいですね。ストーリーを進めたい気持ちと登場人物の心のペースと折り合いがつかないのも大変だったり。

――冒頭の「かなりの温度差であった」という言葉をはじめ、シリアスから一転するような気の利いたユーモアが挟まります。この感覚については?

イシコ:言葉選びとしては、なんとなく洋画の字幕っぽいものを意識しています。真面目だけど少しおどけていたり詩的だったり……。日本語の表現は豊かなので助かります。

 それからシリアスな場面でも隙あらばふざけたいというのもあるかもしれません。暗い雰囲気に耐えられないので。

――自身の絵柄についても教えていただきたいです。

イシコ:学生時代から好きな漫画の絵を真似ては消し真似ては消しを繰り返して、ごちゃ混ぜになった結果こういう絵になりました。

 技術があるわけではないので、限られた画力でどれだけカッコいいキャラや可愛いキャラを表現できるかというチキンレースをしています。

――アイデアが浮かぶ瞬間やクリエイティブになるのはどういった時ですか? 何か心がけているルーティンや取り組みがあれば教えてください。

イシコ:とにかくメモをとっておく事が大事かなと。「漫画のネタはメモするな、忘れるようなネタは大したネタじゃない」と言われたこともありますが、私の場合は自分で言ったことも忘れるのでメモをとっています。

 たまたまテレビで聞いた面白いフレーズや知らない花の名前、友達から聞いたウンチクなど、後で見返すと参考になるんですよ。あとは怪談話とかオカルトな話も想像力が膨らんで勉強になります。

――憧れ、影響を受けた作品や作家はいますか?

イシコ:作品の雰囲気として、特に影響を受けたのは荻上直子監督の映画『かもめ食堂』。個性的な登場人物と美味しそうな食事に癒される作品です。ライラックが鮭が好きという設定はここから来ています。

 萩上さんの作品は『めがね』と『トイレット』も大好きです。邦画と洋画の間のような独特の空気感を漫画でも表現できたらと思っています。

▪️『邪神の弁当屋さん』は講談社コミックDAYSで連載中。(https://comic-days.com/episode/2550912964611244527
本日1月20日に単行本第1巻が発売。

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