あのちゃんが推す! 衣装デザイナー・MIYANISHIYAMA 意外すぎるキャリアとカワイイ服作りの極意を聞いた

■最新作が最高傑作

――ご自身で今まで手掛けた衣装の中で、傑作だと感じているものはどれでしょうか。

MIYA:その質問に答えるとなれば、“最新作”になるのかな。私は過去に興味がないんですよ。本に載っているのは10年分の一部なのですが、読んでみると、これはこうしたほうがいいな…と思えてくるのです。作品はそういうものだと思いますので、最新が一番だと思っています。この本で言えば、表紙と裏表紙の衣装ですね。ただ、裏表紙の衣装はあのさんが着た衣装を組み合わせて作っているので、最新なのに古い、いわば“温故知新”ですね。

――表紙の衣装は最新作にして最高の作品ということですが、どんな思いでデザインされたのでしょうか。

インタビューに応じるMIYANISHIYAMA

MIYA:あのさんが衣装に埋もれている感じを出したかったのです。岩っぽい感じ、原石感。あのさんと知り合ったのは結構前で、私がブランドを始めた直後から服を買ってくれていたのです。それを知らず、偶然にも私が初めて「この人の衣装を作りたい」と思ったのが、あのさんでした。話も合うし、プライベートでもご飯を食べに行くうちに交流が始まりました。あのさんは当時から“原石感”が凄かった。そこで、衣装にイメージを盛り込みました。おこがまし善話ではありますが、原石を見つけた、という感じが表現できたと思っています。

――デザインを考えるときは、スケッチなどをされますか?

MIYA:そのときの気分によるのですが、基本的にはしないです。思いついたものをiPadに描いていく。こだわりがあるとかではなく、アイディアを書き溜めていく習慣はないですね。素材選びについては、アイドルの衣装というものは良くも悪くも選べる生地が決まっています。汗染みが残らないとか、伸縮性があるとか。基本的に素材選びは逆算的に考えていきます。

――制約の中でこれほど独創的なものを生み出されるのは、やはり凄いとしか言いようがありません。

MIYA:たぶん、私が服飾の学校に行っていないから、逆に良かったのかもしれません。縫い始める前にまずはパターンを作ってとか、試作品を作ってとか、いつもそういう流れをすっ飛ばしてしまうのです。純粋に、できないので(笑)。

――色使いに関してはどうですか。使える色の縛りがあるのでしょうか。

MIYA:色は、アイドルの場合はメンバーカラーがどうしてもあるので、それを出したいと言われれば、縛りがあります。あとは、生地によってバリエーションがあるものとないものがある。例えば、オレンジとかミントグリーンのある生地が少ないんです。かわいい色なのですが。だから生地業者の息子と結婚したいなと思うことがありました(笑)。作れば絶対に売れるよ、と提案したい。そう思うくらい、本当にないんです。

■本当にかわいい服はどこに売っているのかな

――ステージ映えする衣装を生み出す秘訣はあるのでしょうか。

MIYA:真っ黒は滅多に使わないですね。なるべく反射するとか、艶があるとか、光に関しては敏感かもしれません。

――作るのが難しい衣装などはありますか。

MIYA:デザインの依頼をいただくとき、たまにアニメの衣装を参考に示される人は多いです。これっぽいスカートで、とかね。ただ、アニメやイラストは重力がないんですよ。膨らんだスカートとか、ふわっとした羽衣とか、ごく普通にあります。実際に作るとすればなるべく近いイメージになるよう努力しますが、双方のイメージの擦り合わせが難しくてその部分が肝になります。

――今、ファッションがかつてほどインパクトがないといわれます。ファッション業界に関して今後、どうなっていくとみていますか。

MIYA:一消費者としての意見ですが、本当にかわいい服はどこに売っているのかな、と思います。と友達にも言っているくらい。私が服を作り始めて2~3年のころ、新宿の伊勢丹には都のデザイナーの服を売るセレクトショップがあって、私のブランドもほかと一緒にイベントを実施。無名の私が発表できたので、夢があった。今や、そうした場がなくなりつつあります。

――非常によくわかります。百貨店が流行の発信基地ではなくなりましたね。

MIYA:かわいい服をつくっても高くなってしまうし、その価格帯を買える人は少なくなっているので、作る側も作りづらいかもしれません。私は、安くてかわいい服はあると感じますが、値段を見ずに「これめっちゃかわいい」「欲しい」と思う服は少ないなと感じます。昔から服にそんなこだわりがあるタイプではないのですが、そんな気がしています。

■男性用の服、男女関係ない服にも挑戦したい

裏表紙&巻末は人気ホスト・噂のりっくんの新作衣装の撮り下ろし。『TEN #衣装 #アイドル #カワイイ #MIYANISHIYAMA』の中面より

――MIYAさんが今後、手掛けたいと思っている服はどんなものでしょうか。

MIYA:この10年間で、結構やり切った感じがあるのです。作りたいものを作ってきたし、思いついたら作ることができる環境を作ってきたので。それなりに仕事もしてきたし、かといってお金のために無理して働きたくはないですね。今回、本を読み返して感じましたが、私は女の子の服は作ってきましたが、メンズの服をほとんど作ってこなかったなと思いました。あとは、男女関係なく着られる服も作ってみたい。あとは、何か全然、違うジャンルの仕事もしてみたいですね。

――個人的には、建築のデザインをやってほしいですね。

MIYA:私がもし建築をやり始めたら、違法建築になってしまいそう(笑)。実は、大学生の頃は建築も勉強していたのです。家具とかもめっちゃ好きなんです。ただ、私は製図の机に向き合うと眠くなるんです。実際、寝ました(笑)。

――面白いエピソードですね。

MIYA:この前、降幡愛さんのラジオで衣装の話をしたのですが、結構おしゃべりだったので、次もまたラジオの仕事をしてみたい。これまでは形に残る仕事をしてきたので、逆に形に残らない仕事もしてみたいですね。

――このインタビューを読んで、衣装デザイナーの仕事に興味を持つ方もおられると思います。仕事の楽しさや魅力について伺えますか。

MIYA:個人的には、普通に、すごくいい思い出になるのが一番かな。本が出ることもそうですが。見返すと、これは夜中を通して作ったな、この服は修正が一番多かったな…などと思い出すことが多い。それって、結構な醍醐味です。振り返ったときに自分の生活を思い出す、よく聞いていた曲を久しぶりに聞くみたいなことを仕事でできて、自分の生き様を振り返れるのは魅力だなと思いました。あとは、「あのさんの着ている衣装を作っている人」ではなく、あのさんを見て「MIYANISHIYAMAの衣装を着ている」、と言われるようになりたいですね。

MIYANISHIYAMA『TEN #衣装 #アイドル #カワイイ #MIYANISHIYAMA』(玄光社)

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