『ぼっち・ざ・ろっく!』に続く? 『ふつうの軽音部』『ロッカロック』が伝える、高校生バンドの熱さと楽しさ

 山田尚子監督の新作長編アニメ『きみの色』が公開となり、TVシリーズを再編集した『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:Re:』も好評と、映画館では高校生バンドが登場するアニメ映画が、青春の輝きを音楽に乗せて放っている。漫画の方でも高校生バンドを主人公にした新しい作品が話題になっていて、読んで憧れた人たちから令和のロックミュージシャンを生み出しそうだ。

 コードをひたすら覚える。少しは上達したつもりがオーディションにしっかり落ちる。色恋沙汰で関係がギクシャクしてバンドが潰れる。高校生のバンド活動で起こりがちなできごとを、ひとつひとつ描いていくだけで、圧倒的な面白さを感じさせる漫画がクワハリ原作、出内テツオ作画の『ふつうの軽音部』(集英社)だ。8月28日に発表された「次にくるマンガ大賞2024」でも、Webマンガ部門で堂々の1位を獲得した。

 銀杏BOYZやandymori、ナンバーガールといったロックバンドの音楽をよく聞いていた鳩野ちひろが、高校に進学して軽音部に入ってエレキギターを始めた。最初のうちは廊下に座って練習するだけだったが、ベースをやっている幸山厘という女子から声をかけられ、男子2人を加えた4人組のバンド「ラチッタデッラ」を作って活動を始めたところで、いろいろと問題が起こり始める。

 最初の部内オーディションに落ちた程度で男子2人はやる気をなくす。そのうちのヨンスは厘に告白して拒絶され退部。残ったドラムは別のバンドに誘われ移籍し、「ラチッタデッラ」は早くも解散してしまうが、その裏で厘によるある企みが巡らされていた。それはちひろをボーカルにすること。初対面の時に何かを感じていたが、誰もいない部室でひとり、ちひろが歌うところを聞いて才能を確信した。

 厘は恋愛問題から仲間が退部してしまったドラマーの内田桃に声をかけ、付き合っていたバンド仲間から振られて抜けたリードギターの藤井彩目にもアタックしていく。こうしたメンバー集めで厘が繰り出す策略の面白さが裏側にあるとしたら、表の面白さはやはりちひろという主人公の圧倒的なポジティブさだ。

 10万円もするフェンダーのテレキャスターを、初心者ながらいきなり買うのもなかなかの度胸だが、ギターに見合わない腕前を自覚して毎日のように練習し、1年生お披露目ライブで緊張して声を出せず大失敗した後は、夏休み中ずっと公園で弾き語りする根性を見せる。

 恥ずかしさよりも前向きな気持ちが先に立つのは、ちひろをロック好きにした張本人で、訳あって家を出ていった父親への愛憎入り交じった感情が底にあるからなのか、それとも本当に楽天家なのか。ストーリーが進展する中で見えてきそうだが、今の時点で言えるのは、ちひろの頑張りで仲間に加わった桃や、9月4日発売の第3巻でちひろたちとの関係を深める彩目にも影響して、ひとつのバンドとなっていく姿を見ていけるということだ。

 9月1日に「少年ジャンプ+」で配信されたエピソードで、ちひろはようやく観衆にも覚醒した姿を見せる。これからどこに向かって進んでいくのか。厘が鳩野推しのあまりにバンドを壊してしまうような展開もあるのか。大いに気になる。

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