『WIND BREAKER』桜遥は“主人公らしくない主人公”? 新鮮で愛すべきキャラクター性を考察

恋愛センサー反応! 不良漫画イチ「赤面する男」

 風鈴高校のメンバーも街の人も心が温かいのだが、人付き合いが苦手な遥からすると常に慣れないことだらけ。素直に好意を受け入れられず、つい突っぱねてしまうツンデレさが愛らしい。嘘が得意でないせいか、ドギマギし始めると全身から本音が漏れ出るため、蘇芳を始めとした防風鈴メンツはいつもの光景として微笑ましく見守る。

 「ヤンキー」というモチーフには、「不器用」というイメージがつきまとう。素直になれず、上手な表現が分からないからこそ拳で語り、確かめ合う。だからこそストレートに核心を突かれると「うっ」と押し黙る不良キャラクターは多いけれど、遥は特にポーカーフェイスが苦手。驚くほど分かりやすく反応してしまうのだから、不良漫画界トップクラス……いや、最も「赤面」する男かもしれない。

 何だかんだ言いつつも、彼は周りの優しさが嬉しいのだ。慣れないからくすぐったくて、変な居心地の悪さを覚えるから、“恋愛センサー”と呼ばれるスイッチが入るのだろう。いつかは違和感を覚える日がやってくるとは思うが、それはそれで寂しいと感じる筆者がいる。勝手な考えかもしれないが、できることなら不器用+赤面する姿を長いこと見ていたい。桜遥のチャームポイントの一つであり、その感受性が彼の“味”だから。

桜遥は“ヒトリ”から“みんな”へ

 決して孤独を愛する人間ではなく、これまでの状況から一匹狼の道を歩まざるを得なかった遥。現在の姿を見れば、彼の本心は容易に理解できるだろう。

 『WIND BREAKER』は桜遥がヒトリから“みんな”へと成長し、絆を深める物語でもある。仲間のために動き、人間として階段を上る男は今後どうなっていくのか。遥の持つ闇が霧散し、いつか太陽が差す日を読者は待ちわびている。

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