『プリパラ』10周年、普遍のキャラはどうつくられた? アートデザイナー・金谷有希子に聞く、創作の裏話

金谷がお気に入りのデザインと語るファルル。

■『プリパラ』らしいデザインとは

――らぁらと一緒にアイドルグループ「そらみスマイル」を結成する、みれぃとそふぃも個性的なデザインですね。みれぃはカラフルでポップな感じで、そふぃはクールビューティーでゴスロリっぽい趣があります。

金谷:みれぃは、全体的に当時人気だった原宿系アーティストのイメージが結構入っています。あと、猫耳ヘアーがファッション誌で取り上げられていたので反映していますし、ポップさを表すためにサーカスのピエロの要素も入っています。そふぃは一発でキャラデザが決まりました。姫カットで、ゴスロリで、素直に王道なイメージで描いたと思います。

――3人はそれぞれ異なる雰囲気ですよね。アイドルグループの統一感を出すのは難しかったのではないでしょうか。

金谷:統一感を出す意味でリボンやストライプのモチーフを入れたり、当時流行っていたニーハイソックスを採用しています。ニーハイソックスは『プリパラ』のアイドルのシンボルになっているようですね。2021年に立ち上がった『アイドルランドプリパラ』の主人公、香田澄あまりをショートソックスにしたら、周りから「『プリパラ』はニーハイでしょ!」と言われたんですが、今はショートソックスが流行りなので、そこは押し切りました(笑)。

南みれぃ。普段はパプリカ学園中学部の風紀委員長だが、プリパラではポップな雰囲気のアイドルになり、語尾に「ぷり」をつけてしゃべる。「ポップステップげっちゅー」が合言葉。

――ははは。常に最新の流行を取り入れてデザインされていると。先ほど、『プリパラ』らしさという話が出ましたが、金谷さんが考える『プリパラ』らしいデザインとはなんでしょうか。

金谷:既にお話した、“友達になりたい”と思うデザインがそうです。あとは、タイトルロゴにリボンが入っているので、リボンを大事にデザインしています。友達と友達を繋ぐのがリボンですからね。『プリティーリズム』の時は、プリズムストーンがハートの形でしたからハートが大事でした。そういったポイントを抑えつつ、流行を取り入れ、時代に合わせたデザインを心掛けました。

――個人的には黒須あろまの悪魔的なデザインがかわいいと思うのですが、ファンのみなさんにはそれぞれ“推し”がいると思います。金谷さんが好きなキャラは誰ですか。

金谷:みんな好きなのですが、強いて挙げるとすれば、ふわり(緑風ふわり)です。私は子どもの頃、ふんわり優しくて、おっとりしていて、動物と仲が良くて……という女の子が大好きだったんですよ。ふわりは小さい頃の私がきっと好きになっていたと思うし、小さい頃の私に向けてデザインしたキャラといえますね。

北条そふぃ。天才的な才能を持ったアイドル。梅干しこと“レッドフラッシュ”が必需品で、梅干しが切れると「ぷしゅ~」と力がなくなってしまう。
『アイドルランドプリパラ』の主人公、香田澄あまり。現代の流行を反映し、ショートソックスを履いている点が、これまでのプリパラアイドルと異なっていることに注目したい。
黒須あろま。悪魔系アイドルであり、パプリカ学園小学部6年6組に在籍し、6月6日生まれである。
金谷がお気に入りと話す、緑風ふわり。“パルプス”出身の少女だが、プリパラのプリンセス候補としてパプリカ学園中等部に転校してきた。稀に語尾に「なちゅ」をつけてしゃべる。

■女の子が主人公のゲームを作り続けたい

――現在、金谷さんはシンソフィアでどのようなお仕事をされているのでしょうか。

金谷:アートディレクションをする機会は増えていますが、絵を描く仕事が相変わらず多く、仕事内容は変わっていないですね。あと、採用にも関わっていますし、後輩にどう接したら成長しやすいかなど、気を配っているのは10年前と違っている部分かもしれません。

――これからどんな作品を手掛けていきたいと思われますか。

金谷:女の子が主人公のゲームを作り続けたいと思っています。私自身が子どものころからそういったゲームを遊んできましたし、そもそも女の子が主人公のゲームは全体の比率を考えるとまだ少ないと思っています。プレイヤーが自分自身だと思える子が主人公で、勇気をもって夢に向かえる作品を作れたらいいなと思っています。

――女の子が主人公のゲーム、確かに少ないかもしれませんね。ちなみに、ゲーム業界での女性の比率はどのくらいなのでしょうか。

金谷:はっきりとは言えませんが、アニメ会社と比較すると、作り手や責任者を見てもゲーム業界は女性が少ないと感じます。シンソフィアは多いと言われるほうですが、それでも全社員の半数にも満たない。私は女性の作り手が増えて欲しいと願っています。女性が半数いたら多様性が広がるでしょうし、決定権を持つところに女性がいれば、今までとは違った感覚の作品が生まれると思うんですよ。当社では新卒はもちろんですが、キャリア採用もやっているので、興味を持った方はぜひご応募いただければと。一緒にゲームを製作する仲間を募集しています。

――『プリパラ』に関わったことで、金谷さんの人生も変わったのではないでしょうか。

金谷:10年経って、「『プリパラ』大好きです!」と声をかけられる機会も増えました。もちろん私だけの手柄ではないのですが、みなさんにとって大事な作品になっているなと感じるので、関わることができて本当に良かったです。

――『プリパラ』をずっと応援してくださっているファンの方に向けて、メッセージをいただけますとありがたいです。

金谷:『プリパラ』をいつも気にかけてくださって、ありがとうございます。大好きという方も、全然知らないけれどこの記事を読んでくださった(笑)という方も、『プリパラ』はいつでもあなたのことをお待ちしています。この機会にぜひ作品に触れてみていただきたいですね。きっと、キャラクターたちがいつでも迎えてくれると思いますよ。

『プリパラ』10周年を記念して、アニメスタッフによって描き下ろされた真中らぁらのイラスト。
10周年に合わせて、金谷が新規にデザインした“らぁるる”。

■イベント情報
大プリパラ展
10年たっても、 み~んなトモダチ!み~んなアイドル!
会期:2024年8月9日(金)~ 8月25日(日)
営業時間:10時00分~20時00分(19時30分最終入場)
※営業時間は変更になる場合があります。

会場:渋谷西武B館イベントスペース
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町21-1 B館地下1階
【前売日時指定券】1,500円(税込)
販売期間:2024年8月8日(木)23:59
【前売券】1,500円(税込)
販売期間:2024年8月8日(木)23:59
【当日券】1,800円(税込)
販売期間:2024年8月25日(日)19:00
公式ホームページ
https://www.ticketport.co.jp/lp/pripara10th/

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