倉田真由美、亡き夫・叶井俊太郎さんへの想い「亡くなる前日の食事はファミチキでした」

■やりたいことを我慢せずに生きる

――私事で恐縮ですが、私は叶井さんの話を聞いて、死生観が大きく変わりました。余命宣告されたても死を怖がらず、やりたいことをとことんやるべきだと。叶井さんは末期がんをむしろポジティブに捉え、末期がんになったからこそかえって仕事がスムーズに進むと考え、全力で活動していました。そんな姿を見て、目から鱗が落ちました。

倉田:私が夫から学んだ死生観のひとつは、普段からやりたいことはやっておけ、後回しにするなということ。事実、精一杯楽しいことをやってきたから、死の直前でも、本人は後悔することは一つもなかったと思います。結婚すると、趣味や仕事のやりたいことを我慢するケースがあると思うけれど、我が家は何も我慢しませんでしたし。

――お互いに自由で、束縛されない関係だったというわけですね。

倉田:私は父を22年に亡くしているのですが、父の死後、母は急に習い事を3~4つも始めました。旅行にでかけたり、ランチに行ったりと、一気に人生が楽しくなったようです。配偶者が嫌な顔をするからと気を使い、やりたいことをやれずにいる夫婦は多い。中村うさぎさんはいつも自由だけれど、結婚後、女友達と何日か旅行できる配偶者持ちって、あんまりいないんですよ。夫は「ママはママの好きなようにやって」と言ってくれたから、私は家事も仕事も自由にしていましたし、夫も自由に振る舞うことができたんです。

――お互いの立場を理解し合い、尊重していたことがわかります。

倉田:それってすごく大きくて、相手のために我慢しなかったから、夫の「いつ死んでもいい」という気持ちもよくわかるんです。ただ、父の死後に趣味を楽しんでいる母と違って、私はめそめそしてしまうかな。3か月以上経っても、泣いてしまうし。

――倉田さんにとって、最高の夫だったんですね。

倉田:合わない人は結構いたと思うんです。だって、3回も結婚に失敗しているし、なんでもかんでも上手にできる人じゃないし、金遣いは荒いし、そういうのが嫌だという人とは相性が悪いと思いますね。それでも、私にとっては最高の夫でした。

■赤の他人として関わっても、好きだった

――叶井さんは破天荒なイメージがありますし、倉田さんが付き合う上で苦労も多かったのでは、と想像してしまうのですが。

倉田:私は婚約指輪も結婚指輪ももらっていないし、誕生日のプレゼントを買ってもらったことがないんですよ。むしろ私に半分お金を出させて、夫は自分用の指輪を買っていましたから。自己破産をしているとはいえ、それなりに収入があったのですが、全部自分で使ってしまうからいつもお金がない。しかも、家にはちょっとしかお金を入れないから、節約して家計をやりくりするのは私の係になります。夫は全身ブランド物なのに、私はしまむらとかね(笑)。

――さすが叶井さん、なんでも極端ですね。

倉田:夫は、しまむらの店を見つけると子どもの前で「ほら、ママの好きなお店だよ」と言ったりしていました。私は、「いやいや、しまむらの服を着ているのはあんたのせいだろ!」と怒ってみせるけれど、とにかく行動や発言がいちいち面白いわけ(笑)。腹が立つ冗談も多かったし、がんになってからは死んだふりをして私を驚かせたりもしたけれど、それらも含めて相性が全部よかったんです。

――叶井さんを倉田さんに紹介した中村うさぎさんは、「くらたまは絶対にすぐ離婚すると思っていた」と話していましたが、長く続いた理由は相性にあったわけですね。一方で、叶井さんはそのイメージからは想像できないほど、子煩悩だったとか。

倉田:子どものことは本当に甘やかしていましたよ。まさに子煩悩ですね。夫にとって、一番大事なのは子どもだったと思います。私の誕生日には何のプレゼントもないのに、娘の誕生日にはお金をかけて好きなものをプレゼントしていましたから。まあ、その損失補填は私がするんですけれどね(笑)。そのバランスのおかしさもよかったです。

――14年以上に及んだ結婚生活を振り返って、倉田さんはどう思われますか。

倉田:夫は掃除や皿洗いなどの家事を手伝ってくれてありがたかったけれど、それよりも面白かった日々を思い出します。あの夫らしさは夫にしかないもので、それをこの先味わえないんだなと思うと、喪失感を感じ、辛いものがありますね。未だに思い出すと涙が出てくるし、父や祖母が亡くなった時よりも桁違い、100倍以上泣いているかもしれない。夫は本当に魅力的な人物。仮に結婚していなくて、赤の他人として関わっても、きっと好きになっていたでしょうね。

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