【漫画】休日に舞い込む突然の仕事、自分は何のために働いているのか……SNS漫画『ご自愛ください』に共感

――多くのいいねが集まっていますが、これをどう捉えていますか?

大町テラス(以下、大町):雑誌に発表した時はあまり反応がなかったので「地味な話だしな……」と思っていましたが、Xに載せたことでたくさんの方に届いて嬉しく思っています。

――本作の着想や制作の原動力について教えてください。

大町:出産後、初めて描いた読切作品でした。担当編集者の方にお声がけをいただいたことがきっかけではありますが、産休明けにまたしっかりと漫画が描けるのか、自分を試したい気持ちがあったように思います。

 原動力は自分の中の「これが描きたい」という気持ちと編集者や読者からの「描いてほしい、読みたい」が両方あることかもしれません。

――コロナ感染拡大のニュースが冒頭に出てきますが、当時の経験は作品に投影されていますか。

大町:ちょうど妊娠〜出産の時で自分自身の環境も変化していました。同時に親族がコロナ感染から亡くなることがあり、かなりセンシティブになっていたと思います。

 毎日ニュースで感染者数が発表されたり、どこに行くにもマスクをしたり手洗いや消毒が頻繁になったり、想像もしていなかったような世界が現実になりました。「歴史の中でも大きな変化の時期だろう」と考えていたので、その時代に生きていた人しか感じられないムードを少しでも作品の中に残したいなと。

――主人公の仕事を広告制作会社に設定した意図は?

大町:本作のテーマは「自分が受けた理不尽をどう扱うか」。つまり過酷な労働を強いられてきた人が次の世代にも同じことを引き継ぐのか、ということを表現しています。

 もう10年以上も前ですが、私自身が広告制作のデザイン事務所で働いた時期があるんですよ。さすがに業界も時代が変わって働きやすくなったと思っていましたが、本作の感想の中に「リアルすぎて、実体験を思い出し辛くなった」といったものが多かったですね。いまだに働く環境が変わっていないのだな……と仕事の大変さをしみじみ感じました。

――女性の銭湯&サウナ、そばを作る際の内省描写もリアリティがありました。

大町:サウナや銭湯は実際の施設をモデルにしています。そばも実際につくったことがあるものです。深夜に疲れて帰ってきてもなんとかつくれるもの……。なおかつサウナの後に食べると美味しそうなもの、として考えました。

――影響を受けた作品や作家はいますか?

大町:さくらももこ先生、岡崎京子先生、大島弓子先生、入江喜和先生です。

――作家としての展望、なりたい作家像を教えてください。

大町:この夏から新連載が始まる予定です。たくさんの方に楽しんでいただける作品になればいいなと思っています。電子書籍で漫画を読む機会が増えている昨今ですが、個人的には紙の本が好きなので「この人の本は紙で持っていたい!」と言ってもらえる、紙の本を本棚に置いてもらえるような作家になりたいなと思います。

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