『アオアシ』スピンオフ読切の掲載が決定! 読者の心に残り続ける男「中村平」の魅力に迫る
キャラクターに与えられた役割を全うした平
『アオアシ』の作者である小林有吾先生は自身のブログで、漫画のキャラクターは「役割」をもって登場し、それを全うしなければならない。意味なく出てくる登場人物はいない、と言われている。葦人の前で引退するという役割を果たし、多くの読者の記憶に残った平はキャラクターとして1番幸せな終わり方をした、とも語られている。
常に臆することなく、プロになることを1ミリも疑わず階段を駆け上っていくチームメイト達を横目に、現役時代の平はずっと苦しんでいた。なかでも若くして日本の至宝として早くもエスペリオンのトップチームで活躍する同級生の栗林晴久(くりばやしはるひさ)に対してはその感情が一際強かったのだろう。
試合を楽しむ余裕もなく、まるで常に試験を受けさせられているようにも感じていた平。とにかくボールが怖かった、と正直に語る平の姿には心を鷲掴みにされたような苦しい想いを抱えた読者も少なくないことだろう。
サッカーに必要な才能について平は、技術でも身体能力でもなく「どれだけサッカーを愛せるか」だと語っている。引退した今、やっと心から栗林のことを応援できると告げた平のどこか寂しげでありながら若干の笑みを浮かべているような表情は今でも忘れられない。
平が栗林を初めチームメイトに語った言葉が全てだとは思わない。東京シティ・エスペリオンでプロになることを夢見ながら過ごした日々、憧れのプロへの想いを抱きながら大好きなサッカーを楽しめる瞬間だってきっとあったに違いない。自らの決断で1つの夢を終わらせて、次の道へと進む平を心から応援したい。
今回描かれるスピンオフは、平がサッカーを引退する前のエピソードだそう。タイトルからして平がチームメイトに夜食を振る舞う姿が想像されるが、チームメイトに愛されている平の姿がまた見られるかと思うととにかく楽しみでたまらない。『アオアシ ミッドナイト・ダイナー』は2024年5月に前編、6月に後編が公開予定だ。