解読『ジョジョの奇妙な冒険』Vol.4

【解読『ジョジョの奇妙な冒険』】本日実写ドラマ最新作放送、「岸辺露伴」とは何者か――稀代のトリックスターを分析

“敵”はスタンドが効かない「人外の存在」

 さて、そんな岸辺露伴を主人公にしたスピンオフ・シリーズ『岸辺露伴は動かない』だが、なんといっても面白いのは、各回に登場する“敵”の存在である。

 あらためていうまでもなく、他者を自由に操ることができる露伴の「ヘブンズ・ドアー」は、空条承太郎の「スタープラチナ・ザ・ワールド」などとともに、“最強のスタンド”の1つといえよう(使い方しだいでは、「スタープラチナ・ザ・ワールド」でさえ封じることができるかもしれない)。

 しかし、『岸辺露伴は動かない』(および『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』)に出てくる“敵”の多くには、スタンドは通用しない。なぜなら、スタンドによる攻撃は同じ「スタンド使い」には有効だが、同シリーズに出てくる“敵”は、神や妖怪、自然の怪異といった、いわば「人外の存在」だからだ。

 子孫を残すことに異様に執着している妖怪、マナーに厳しい山の神々、禁漁区でしか獲ることのできない踊るアワビ、“筋肉の神”に取り憑かれた男、決して入ってはいけない老木の空洞、そして、この世で最も黒く邪悪な絵……。

 こうした未知の存在からの超自然的な攻撃を、露伴は、これまで培ってきた経験と独自のアイデアでなんとか切り抜ける。また、直接的には相手に効かないまでも、可能な限り「ヘブンズ・ドアー」で対抗しようとする。そこには、「ジョジョ」本編におけるスタンドバトルとはひと味違った頭脳戦の面白さがある。

 いずれにせよ、『岸辺露伴は動かない』というタイトルとは裏腹に、岸辺露伴は、結構“動く”のである(荒木飛呂彦によると、タイトルの「動かない」は、「岸辺露伴は主人公ではなく、物語のナビゲーター」だということを表わしているそうだが、それはあくまでも、露伴が傍観者として描かれたシリーズ第1作目の時点における話である)。

 むろん、そんな彼を突き動かしているのは、尽きることのない好奇心と、生(なま)の経験をありのままに記述しようという見上げた漫画家魂である。そう、描くべき物語が「奇妙」であればあるほど、リアリティがなければならない。だから、岸辺露伴は、「取材」と称して暇さえあれば危険な場所へと向かうのだ。

 岸辺露伴とは何者か。「面白い漫画」を描くためなら、たとえ相手が「神」であっても一切怯むことのない、唯一無二のエンターテイナーである。そしてその熱いアティチュードは、「漫画家・荒木飛呂彦」のそれと同じだといっても過言ではないだろう。

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