本格格闘技マンガ『アスミカケル』が連載終了……なぜ「ジャンプで格闘技は鬼門」と言われるのか?
さまざまなジャンルのヒット作を生み出してきた『週刊少年ジャンプ』だが、なぜか格闘技マンガは人気が出にくい傾向にあり、“鬼門”とすら言われている。それを証明するかのように、2月12日には総合格闘技を題材としたマンガ『アスミカケル』が連載終了を迎えてしまった。
『アスミカケル』は、武術家の祖父をもつ主人公・二兎が、プロの総合格闘技(MMA)選手を目指す女子高生・奈央との出会いをきっかけに、武の道を歩み始める物語。作者の川田は、アニメ化もされた相撲マンガ『火ノ丸相撲』を代表作にもつ実力派で、今回の連載でもかなり本格的な格闘技描写を盛り込んでいた。
打撃と投げ、極めが入り乱される“打・投・極”の読み合いや、選手たちが背負ったさまざまなバックボーンなど、少年マンガとは思えないほどの深みがある格闘マンガとなっていた上、要所ではファンタジー的な飛躍もしっかり織り込まれていた。掲載順こそ安定していなかったものの、熱狂的なファンが付いており、32話目での連載終了という結果を惜しむ声が数多く上がっている。
とはいえ、本格的な格闘技マンガが『週刊少年ジャンプ』でヒットしにくいことは連載が始まる前から分かっていたことではある。たとえばその代表格は、ボクシングマンガ。1970年代後半には『リングにかけろ』というレジェンド作品があったものの、それ以降は打ち切りが相次いでいる。
1984年には小谷憲一の『KID』、1988年には樹崎聖の『ハードラック 』が半年に満たない期間で連載終了しているほか、1994年には大御所・宮下あきらの『BAKUDAN』が17話で終了。つい最近は、戦後ボクシングを題材とした『ドリトライ』が短期で幕を閉じたことが話題を呼んだばかりだ。
格闘技の花形であるボクシングですらこの有様なので、当然ほかの種目も厳しい戦いを強いられている。たとえばキックボクシングを扱った『K.O.SEN』は、2008年2号~15号の期間で連載終了。また柔道を題材とした連載としては、2003年の『サラブレッドと呼ばないで』、2014年の『ジュウドウズ』が半年未満で完結している。なお、『ジュウドウズ』の作者・近藤信輔はその後講談社で『忍者と極道』をヒットさせており、週刊連載における題材選びの難しさを感じさせられる。
同じく実力のある作家の作品でいうと、『キン肉マン』で有名なゆでたまごのムエタイマンガ『蹴撃手マモル』を挙げられるだろう。同作は1990年から連載が始まったが、半年ほどで打ち切られており、最終話には「戦いはこれからだ!!」というお決まりのセリフが用意されていた。