奈良のコンビニ、本の販売が脚光 書店がない地域が増える中、特色出したセレクトで地域交流の橋渡しにも

  連日のように報じられる書店の閉店に関するニュースだが、その一方で、大型店やチェーン店にはない特色を打ち出して、生き残りをかけようとする書店が続出している。そうした影響は、コンビニの書籍コーナーにも及んでいるという。

  1月17日付の日本経済新聞でも報じられたが、「セブン–イレブン天理成願寺町店」は海外絵本、短歌、パレスチナ問題などの書籍を扱い、コンビニらしからぬ選書として話題を呼んでいるという。読書好きの大学生のアイディアが発端となり、次第に地域のコミュニティスペースにもなってきたとのことだ。

  コンビニの雑誌・書籍コーナーは、かつてはコンビニの集客のうえで重要視されていた。しかし、電子書籍やネット書店の爆発的な普及によって、どこのコンビニでも売上は芳しくないと聞く。今では「雑誌や本の売り場をなくて、もっと売れ筋の商品を並べるコーナーにしたい」と思っている関係者も少なくないといわれる。

  しかし、地方都市においては新刊書店を買える唯一の場所がコンビニ、となっているケースも珍しくない。出版文化産業振興財団(JPIC)の調査によれば、書店が一つもないいわゆる“書店ゼロ”の市区町村は約26・2%にのぼるといい、書店のかわりをコンビニが担う例は今後も増加すると思われる。

  そうしたなかで、ローソンは、2021年6月、埼玉県狭山市に書店併設型のコンビニ「LAWSONマチの本屋さん」1号店をオープンさせ、着実に店舗数を増加させている。コンビニの機能については、基本的には従来のローソンと同様だが、通常のコンビニよりも本や雑誌を大々的に取り扱うというもので、書店の機能を補完する試みとして話題になった。

  一方で、出版取次大手の日本出版販売(日販)が、コンビニエンスストアに雑誌や書籍を配送する事業を2025年2月には終了するというニュースもあった。コンビニで雑誌や書籍が買えなくなってしまうのではないかと、ネット上では不安視する声が聞かれた。コンビニの雑誌・書籍コーナーが大きな転換期にあることは間違いない。

  そんな中、「セブン–イレブン天理成願寺町店」のような取り組みは、コンビニの雑誌・書籍コーナーの可能性を再確認できるだけでなく、やはり地方都市において書店がなくてはならない存在であることを実感させてくれる。

  コンビニは、フランチャイズのオーナーの自由度が高い部分も多く、地方都市では地元の商品を並べるなど個性を打ち出している店も多い。「セブン–イレブン天理成願寺町店」に続く、本で個性を発揮する店があらわれるのか、注目していきたい。

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