生成AIの反動? 手描きの色紙や原画が活況 アナログで描いた“一点もの”が高騰中

■手塚治虫のアナログの技法に注目が集まる

  2023年、手塚治虫の名作漫画『ブラック・ジャック』の新作を、生成AIの技術を使って生み出したプロジェクトが話題になった。生成AIの力を使って創作された新作はネット上でも賛否両論を呼んだ。その一方で、『ブラック・ジャック』の大規模な原画展も開催され、さらにはNHKの『浦沢直樹の漫勉neo』で手塚の特集が放送されるなど、手塚が手描きで生み出した原画の凄まじさが改めて評価された一年でもあった。

  こうした流れもあってか、手塚の直筆原画が注目されている。2018年に『鉄腕アトム』の原稿が海外のオークションに出品され、約3500万円で落札されて話題になったが、今年1月に開催された「まんだらけオークション」にも『鉄腕アトム』の原稿2点が出品され、それぞれ1000万円を超える価格で落札された。原画のみならず、やはり一点ものとして魅力があるセル画も、高騰を続けている。

  新旧を問わず、アナログへの関心が高まっているとみて間違いない。そして、一連の動きを見ていると、生成AIとアナログはお互いをつぶしあうことはなく、すみ分けるかたちで共存していくと考えられる。商業的な場面では今後もデジタルが主流のままだろうし、10年後には、あちこちで生成AIの技術を取り入れた仕事が行われるようになるのではないかと推定される。

  対して、一点ものの価値があるアナログは、機械式腕時計のように、よりマニアックでニッチな需要に支えられて残っていくのではないだろうか。今後はコミッション系のイベントも増えていきそうだし、デジタルでしか描いてこなかった作家がアナログの技術を学び始める動きも起きていると聞く。2024年も生成AIとアナログの動向から目が離せなくなっている。

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