「未来を予言してるでしょ」『こち亀』度々話題となる“先見性”の凄さを考察
2024年からいよいよ紙幣のデザインが一新される。1,000円札は北里柴三郎、5,000円札は津田梅子、そして10,000円札は渋沢栄一に変更となる。4月14日、国立印刷局が報道陣に、印刷された紙幣を公開したというニュースが出ていた。
秋本治の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(以下、『こち亀』)はたびたび趣味やコレクターをネタにした話が登場するが、第84巻には古銭・古紙幣をテーマにした話「貨幣は寝て待て!?の巻」が載っている。大原部長が実家をお掃除したら、父がコレクションした古紙幣がたくさん出てきたというものだ。その中にあったのが、明治時代初期に発行された八岐大蛇が描かれた20円札である。
大原部長はこれらの紙幣の価値を調べて欲しいと両津に命令する。渋々出かけた両津、馴染みの古物商「インチョキ堂」で古銭のカタログをめくった。ほとんどの紙幣は価値が低かったが、20円札はなんと、極美品に2,000万円という値段がついていたのだ。両津も「フェラーリより高い…」と驚愕している。なお、美品でも1,500万円、並品でも1,000万円と評価されていた。
ところが、その価値を知った両津は当然のごとく、20円札を部長に渡そうとしない。2万円、そして10万円で買おうとするが、中川や麗子が横やりを入れたせいで部長は渡そうとしない。奪い合いになり、お札は真っ二つに裂けてしまったのだ。通常であればこのような紙幣は買取できないのだが、この紙幣に関しては別だ。現存していること自体が貴重であり、数百万円で買い取ってもらえたという。大原部長は家のローンの返済に充てることができたと喜んでいた。
ではこの20円札、現在はいくらになっているのか。『日本貨幣カタログ<2023年版>』(紀伊國屋書店/発行、日本貨幣商協同組合/著)をもとにひも解いてみよう。状態ごとに価格は分かれ、極美品2,000万円、美品1,500万円、並品1,000万となっている。
『こち亀』84巻が刊行されたのは、バブル景気が終焉した1993年である。発売からちょうど30年だが、その年月を考えると意外とプレミアはついていない。しかし、そもそもこの20円札だが、もとの発行枚数が少ない上に現存数となればさらに少ないため市場に出ることは滅多にない。カタログの価格はあくまでも参考価格だから、状態が良いものなどが出てきたら、これ以上の価格に跳ね上がる可能性もあるかもしれない。
現在の野口英世の1,000円札は発行枚数が多いため、プレミアはまずつかないと考えていい。よほど思い入れがあるなら別だが、将来のプレミアを意識して保存する意味はあまりないといえる。
ただし、印刷ミスなどのエラー紙幣や、番号がゾロ目の777777などになったいわゆる珍番であれば話は別だ。財布から偶然見つけただけでもプレミア価格で買い取ってもらえるが、将来的に評価がますます上がる可能性も高い。そういったレア物は大切に保存しておきたい。