『葬送のフリーレン』新OPテーマ、ヨルシカ「晴る」に滲む勇者ヒンメルの姿 名前の由来から楽曲を読み解く
2023年9月より放送を開始し、迎えた新年も引き続き人気を博しているアニメ『葬送のフリーレン』。1月5日放送の第17話「じゃあ元気で」より新章「一級魔法使い試験編」が開幕し、新たなオープニングも話題になっている。
新たなOP主題歌に採用されたのは、ヨルシカ「晴る」。第1クールのOPテーマだったYOASOBI「勇者」の歌詞は作品と完全にリンクしたものだったが、こちらはより抽象度が高く、しかし『葬送のフリーレン』という作品にしっかり寄り添う楽曲になっている。
近いようで遠い「貴方」のことを歌った楽曲に聴こえるが、風、花、土、雨、雲、空、海、そして「晴れ/晴る」と、天候や自然に関するモチーフが多く描かれており、それが異世界ファンタジーである『葬送のフリーレン』の世界観によく合う。そして、本作のもう一人の主人公・勇者ヒンメルはドイツ語で「空/天国」(himmel)を意味しており、楽曲全体に彼の姿が滲むのも素敵なポイントだろう。
「フリーレン」は同じくドイツ語で「凍える/凍結する」(frieren)を意味する言葉で、春の陽光のようなヒンメルと対極的なイメージだ。悠久の時を生きるエルフであるがゆえに人の心を理解できず、かつては「冷たい」と言って差し支えなかった彼女の心を溶かしたのがヒンメルだったと考えれば、切なくもあたたかな春を思わせる楽曲が、ふたりの物語に重なってくる。
ちなみに、フリーレンが旅を共にする若き天才魔法使い「フェルン」は、やはりドイツ語で「遠い/遠く」(fern)という意味。オープニング映像を見ると、サビの<遠くまだ遠くまで>というフレーズとともに振り返るフェルンの姿が映されており、仕掛けの多いヨルシカの作風からも、さらに読み解きがいのある内容に思える。
いずれにしても、新OPはこれから活躍する新キャラクターも生き生きと描かれた、期待感の高まる内容だ。本作において「魔法使い」がどんな存在であり、どんな制度が存在しているのか、ということもじっくり描かれる第2クールを楽しみにしよう。